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TORENDIA

火の用心の事

本文約9,500字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

紅葉先生の愛読者である名古屋の夫人に紹介状をもらい、二人の文筆家が現地へ視察に向かう。旅先で繰り広げた騒動や帰京後の交流を描きつつ、後年、節分の夜に起こった火事の記憶と、それが再来したような不穏な出来事を通じて、日常生活に潜む魔界の消息や火への恐怖を綴る。著者が体験した不思議な符合を交え、教訓と共に火の用心を呼びかける随筆である。

泉鏡太郎

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紅葉先生在世のころ、名古屋に金色夜叉夫人といふ、若い奇麗な夫人があつた。申すまでもなく、最大なる愛讀者で、宮さん、貫一でなければ夜も明けない。

――鬘ならではと見ゆるまでに結做したる圓髷の漆の如きに、珊瑚の六分玉の後插を點じたれば、更に白襟の冷、物の類ふべき無く――

とあれば、鬘ならではと見ゆるまで、圓髷を結なして、六分玉の珊瑚に、冷なる白襟の好み。

――貴族鼠の高縮緬の五紋なる單衣を曳きて、帶は海松地に裝束切模の色紙散の七絲……淡紅色紋絽の長襦袢――

とあれば、かくの如く、お出入の松坂屋へあつらへる。金色夜叉中編のお宮は、この姿で、雪見燈籠を小楯に、寒ざきつゝじの茂みに裾を隱して立つのだから――庭に、築山がかりの景色はあるが、燈籠がないからと、故らに据ゑさせて、右の裝ひでスリツパで芝生を踏んで、秋空を高く睫毛に澄して、やがて雪見燈籠の笠の上にくづほれた。

「お前たち、名古屋へ行くなら、紹介をして遣らうよ。」

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