鳥影
本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
修善寺の温泉宿に逗留する語り手は、館の別荘で目撃されたという美しい鳥の話を耳にする。背が青く胸が赤い、鳩よりも小形ですらりとしたその鳥の姿を、宿の者は知らないという。つがいで現れるというその鳥について、語り手は「翡翠」の名を告げる。得体の知れない鳥への関心から、狩猟を知らぬ語り手が、その姿と物語を求めて別荘の静寂な庭へと思いを馳せる様子を描く。
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雨の晴れた朝である。修善寺の温泉宿、――館の家族の一婦人と、家内が桂川の一本橋向うの花畑へ連立つて、次手に同家の控の別莊――あき屋である――を見せて貰つた、と言つて話した。花畑は渡つてからだが、橋を渡返して館の外まはりをつて行く。……去年の春ごろまでは、樹蔭の徑で、戸田街道の表通りへ土地の人たちも勝手に通行したのだけれども、いまは橋際に木戸が出來て、館の構内に成つた。もとの徑を、おも屋と隔てて廣い空地があつて、追つては庭に造るのださうで、立樹の間に彼方此方、石が澤山に引込んである。川に添つて古い水車小屋また茅葺の小屋もある。別莊はずつと其の奧の樹深い中に建つて居るのを、私は心づもりに知つて居る。總二階十疊に八疊のり縁で、階下は七間まで數へて廣い。雨戸をすつかり明けて見せられたが、裏の山、前の流れ、まことに眺望が好いと言ふ。……借りるつもりか、さては近頃工面がいゝナなぞとおせきなさるまじく。京の金閣寺をごらうじましたか、で見ぶつをしたばかり。唄の床柱ではないが、別莊の庭は、垣根つゞきに南天の林と云ひたいくらゐ、一面輝くが如き紅顆を燭して、水晶の火のやうださうで、奧の濡縁を先に古池が一つ、中に平な苔錆びた石がある。
其處で美しい鳥を見た。
二羽。
「……それは綺麗な鳥なんですよ、背中が青いつたつて、唯青いんぢやあないんです、何とも言へません。胸の處からぼつと紅くつてね、長い嘴をして居るんです、向合つて。……其處いらが靜で、誰も驚かさないと見えて、私たちを見ても、遁げないんですよ。縁からぢき其處に――最も、あゝ綺麗な鳥が、と云つて、雨戸にも密と加減はしましたけれども。……何と云ふ鳥でせうね。内の雀よりはずつと大きくつて、鳩よりは、すらりと痩せて小形な。」