TORENDIA
牛山ホテル(五
場)
岸田國士
TORENDIA
牛山ホテル(五場)
本文約30,600字 ・ 読了時間 約62分
あらすじ(AIが作成しました)
仏領印度支那の港町にある日本人経営のホテルに、訳ありの女たちや商社員が集う。真壁の妾であるさとは、彼が日本へ帰ることを知り、複雑な思いを抱きながらも別れを告げる。周囲の住人たちがそれぞれの思惑や寄る辺なさを抱える中、さとはホテルを去っていく。異国の地で暮らす日本人たちの孤独と、去り行く者と残される者の交錯する日常を描く物語である。
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牛山よね ホテルの女将
同 とみ よねの養女
藤木さと 真壁の妾
石倉やす 仏蘭西人の妾
真壁 S商会出張所旧主任
三谷 S商会出張所新主任
三谷夫人
鵜瀞 S商会社員
島内 同
金田 金田洋行主
岡 写真師
納富 剣道教師
ロオラ 別居せる真壁の妻
その他、ボーイ、車夫、水夫、女等
仏領印度支那のある港
九月の末――雨期に入らうとする前
港に近く、仏国人の住宅地と、所謂「アナミツト」の部落とに接する一区劃、その中心にある日本人経営のホテル。
一
ホテルの帳場兼女将の居間――畳が敷いてある。
前面一段低く、椅子、テーブルを置いた土間。
右手に玄関を兼ねた撞球場に通ずるドア。左手は二階に上る階段と、食堂の入口。正面は大きな窓。
そこから波戸場の一部と水平線が見える。
日が暮れようとしてゐる。
とみ(十九)が、風呂から上つて、化粧をしてゐる。
やす(二十九)は、腹這ひになつて雑誌を読んでゐる。
二人とも白木綿の襦袢に腰巻だけをしてゐる。
さと(二十四)が、土間の上り口に腰をおろして、ぼんやり窓の外を見てゐる。これは、浴衣がけである。
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