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TORENDIA

昨今横浜異聞(一幕)

本文約8,900字 ・ 読了時間 約18分

あらすじ(AIが作成しました)

横浜で新婚生活を送る田代三夫とぬい子の元に、かつてぬい子と親密であった劉鯤が妻の瑩芳を伴い訪ねてくる。田代夫妻は過去の経緯から劉の来訪を恐れ、報復を予感して緊張に包まれる。しかし、劉は現在の自身が幸せな結婚生活を送っていることを明かし、かつての因縁を水に流して二人を南京へ招待する。劉の真意は二人を試すことにあり、無事に夫婦愛を確認したことで、長年のわだかまりは解消に向かう。

岸田國士

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人物

田代三夫

同ぬい子

劉鯤

瑩芳

[#改ページ]

舞台は、横浜郊外にある田代三夫の家の応接間。

外人の設計になる瀟洒なヴィラを、特別の事情で安く借り受け、愛妻ぬい子と二人きりで、結婚後三年の今日、まだ蜜月の生活を楽しんでゐる田代は、永く海外で暮した結果、何処か日本人離れのした神経の鈍さと、それを補ふ感情の濃やかさがある。

細君のぬい子は、生粋の横浜ツ子で、両親は、外人相手の土産物商をしてゐたのだが、彼女の結婚後は、店を人に譲り、鶴見辺に隠居所を建てゝ、豊かな余生を送つてゐる。

田代は現在、南洋貿易を専業とする某商会の庶務課長で、三十六にして既に頭髪の半ばを失ひ、十二違ひのぬい子は、それがために、思ひ切つた若作りのできないことが唯一の憾みである。

正月のある日の午後。

田代は、ヴェランダで新聞を読んでゐるが、やがて、応接間へはひつて来る。

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