TRENDIA CLASSIC
命を弄ぶ男ふた
り(一幕)
岸田國士
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人物
眼鏡をかけた男
繃帯をした男
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鉄道線路の土手――その下が、材木の置場らしい僅かの空地、黒く湿つた土の、ところどころに、踏み躙られた雑草。
遠くに、シグナルの赤い灯。
どこかに、月が出てゐるのだらう。
眼鏡をかけた男――二十四五ぐらゐに見える――が、ぽつねんと、材木に腰をかけてゐる。考へ込む。
溜息をつく、洟をかむ。眼鏡を外して拭く。髪の毛をむしる。腕組みをする。服の皺を伸ばす。舌を出す。
繃帯をした男が現はれる。つまり、顔中繃帯で包んでゐるわけであるが、両方の眼と、鼻の孔と、口の全部、それだけが切り抜いてある。
眼鏡をかけた男の前を行つたり来たりする。そこに人がゐるのを知らないやうにも思はれる。土手の上にあがるが、すぐ降りて来る。
眼鏡 君、君、踏切はもつと先ですよ。 繃帯 (別段驚いた様子もなく)さうですか。踏切はもつと先ですか。(独言のやうに)踏切はもつと先……と(眼鏡をかけた男と並んで腰をかける) 眼鏡 どこかへいらつしやるんですか。 繃帯 行かうと思ふんですがね。君も、どつかへいらつしやるんですか。 眼鏡 行かうか、どうしようかと思つてるんです。 繃帯 なるほど。行くのもいゝが、どんなものですかね。うまく、一と思ひに、行けますかね。 眼鏡 さあ、行つて見ないことにや、わかりませんな。
(長い沈黙)
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