TRENDIA CLASSIC

動員挿話[第一稿]

岸田國士

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宇治少佐

鈴子夫人

馬丁友吉

妻 お種

従卒太田

女中よし

明治三十七年の夏

東京

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第一場

宇治少佐の居間。――夕刻

従卒太田が軍用鞄の整理をしてゐる。

宇治少佐が和服姿で現はれる。

少佐。もう大概揃つたか。 太田。はあ。 少佐。家の者には会つとかんでもいゝのか。 太田。…………。 少佐。なんなら、此処で会つてもいゝぞ。お母さんに来るやうに云つたらどうだ。 太田。駄目です。泣かれると却つて五月蠅いですから……。 少佐。ぢや、もう、今日はいゝから、隊へ帰れ。明日はもう来なくつてもいゝ。馬丁を呼んでくれ。 太田。はあ……(その辺を片づけて)では、帰ります。御判をどうぞ……(証明書に捺印したる後、一礼して起ち去る) 少佐。あ、それから、副官に、今夜はもう用はないつて、さう云へ。 太田。はあ。副官殿に、今夜はもう御用はないと申します。 少佐。(腕を組んで、何事か考へ込む)

夫人現はる。

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