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TORENDIA

先生三人

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

井伏鱒二、佐藤春夫、菊池寛という三人の師を持つ作者が、自身の師弟関係のあり方と、恩師たちからの助言や援助について綴る。文壇における封建的な徒弟気質への抗議に対し、師との良好な関係を肯定的に示す。佐藤へ送った手紙の逸話や、入院を控えた自身の現状、各恩師から受ける深い信頼と配慮を記し、師弟の間に流れる温かな交流や、甘えを許される人間としての生き方を描写する。師弟関係を巡る世間の誤解を解き、恩師への深い感謝を伝える。

太宰治

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🎧 先生三人 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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けさ新聞紙上にて、文壇師弟間の、むかしながらのスパルタ的なる鞭の訓練ちらと垣覗きして、あれではお弟子が可愛さうだと、清潔の義憤、しかも、酸鼻といふ言葉に據つて辛くも表現できる一種凌壯の感覺に突き刺されて、あ、と小さい呼び聲、女の作家、中條百合子氏の、いちいち汚れなき抗議の文字、「文學に、何ぞ、この封建ふうの徒弟氣質、――」云々の、お言葉に接して、いまは猶豫の時に非ず、良き師持ちたるこの身の幸福を、すこしも早う、いちぶいちりんあやまちなく、はつきり、お教へしなければならぬ、たのしき義務をさへ感じました。

いま、私には、三人の誇るべき先生がございます。井伏さんからは特に文章を、佐藤先生からは特に文人墨客の魂を、さうして、菊池氏からは家を。かかる三君への同時の奉仕、しかも、いささかの不自然、こだはりの片鱗だに無し。きのふは佐藤先生へ、「ハネ起きて、先生わかりました! 五百圓は一時。將來は永し。千萬の弱く美しき青年のため私のため、先生のため、山ほどの仕事があつた。アリガタウ存ジマス。この答案、百點滿點しかるべし。」といふ内容の手紙を、投函しての歸りみち、友人の山岸外史とひよつこり逢つた。七月、精養軒以來はじめての對面である。山岸、莞爾と笑つて、「けふは、佐藤春夫先生の御使者だ。工合ひ見て來い、との親心さ。」しまつた! 御使者、山岸から深きことども承り、私のめくらを恥ぢました。云々と書いたら、百點滿點笑止の沙汰、まさしく佐藤家の寶物だ、と殘念むねん、へそを噛むが如き思ひであつた。そのこと、ありのままに山岸へ告げたところ、山岸しさいらしく腕組み、

「君、それが惡い。何も、そんなに迄して、わが功ゆづる必要なし。たいへんの惡癖だ。君、よくぞ、そこまで氣づいて呉れた。僕たちには、それが嬉しくて、――僕、その手紙に間に合はなくて、ああ、よかつた。」

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