てかてか頭の話
本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
山から出てきた若者が、頭をぴかぴかに光らせたいという願いを叶えるため、田舎の理髪店を訪れる。店主の老人から一本の瓶付け油をすべて頭に塗るよう強く懇願する若者の願いを受け、老人は苦労して頭中に油を塗りつける。髪を光らせて店を出た若者は、真夏の太陽の下で次第に体が溶け出し、やがて黒い石へと姿を変える。通りかかった老人は、その残された石を立派な油石として拾い上げ、持ち帰る。
💰 この本を応援する(投げ銭)
ある田舎に、おじいさんの理髪店がありました。おじいさんは、もうだいぶ年をとっていまして、脊が曲がっていました。いいおじいさんなものですから、みんなに、おじいさん、おじいさんと慕われていました。
ちょうど、夏の昼過ぎのことであります。お客が一人もなかったので、おじいさんは、居眠りをしていました。
家の外には、きらきらとして暑そうに日の光がさしていました。往来の土は乾ききって、石の頭までが白くなっていました。あまりあついとみえて、犬一ぴき通っていませんでした。よく遊びにくる近所の子供らも、みんな昼寝をしているとみえて姿を見せません。ただせみが、あちらの森の方で鳴いているのが聞こえてきたばかりでした。
白髪頭のおじいさんは、いい気持ちで、こっくり、こっくりと腰かけて居眠りをしながら夢を見ていました。
「おじいさん、僕にとんぼを捕っておくれ。」と、隣のわんぱく坊やがねだっているのです。
「私は、目が悪くて、とんぼのほうが、よほどりこうだから、それだけはだめだ。」と、おじいさんはいっていました。
「よう、あすこにいるおはぐろとんぼを捕っておくれ。捕ってくれないとぶつよ。」と、わんぱく坊やがいっています。
おじいさんは、「こいつめが。」といって、坊やを追いかけようとすると目がさめました。ちょうどそのとき、そこへ脊の高い若者が入ってきました。
「おいでなさい。」と、おじいさんは、目をこすりながら立ち上がりました。そして、曲がった脊をのして、いすに腰をかけて、鏡に向かっている若者の頭髪を刈ろうといたしました。
おじいさんは、眼鏡をかけて、はさみをチョキチョキと鳴らしながら、くしをもって、若者の頭髪にくし目を入れてみて驚きました。その頭髪は、ごみや砂で汚れて、もう幾年も手を入れたことのないような頭髪でありました。
「おまえさんは、どこからきなさった。」と、おじいさんは、若者に聞きました。
すると、若者は、日に焼けた、真っ黒な顔を向けて、おじいさんにいいました。