TORENDIA
お伽草紙
太宰治
TORENDIA
お伽草紙
本文約70,800字 ・ 読了時間 約142分
あらすじ(AIが作成しました)
「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」など、昔話を、太宰流の独自の解釈で語り直した作品集。
🎧 まだ音声版はありません
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
💰 この本を応援する(投げ銭)
1 / 87
前書き
「あ、鳴つた。」
と言つて、父はペンを置いて立ち上る。警報くらゐでは立ち上らぬのだが、高射砲が鳴り出すと、仕事をやめて、五歳の女の子に防空頭巾をかぶせ、これを抱きかかへて防空壕にはひる。既に、母は二歳の男の子を脊負つて壕の奧にうずくまつてゐる。
「近いやうだね。」
「ええ。どうも、この壕は窮屈で。」
「さうかね。」と父は不滿さうに、「しかし、これくらゐで、ちやうどいいのだよ。あまり深いと生埋めの危險がある。」
「でも、もすこし廣くしてもいいでせう。」
「うむ、まあ、さうだが、いまは土が凍つて固くなつてゐるから掘るのが困難だ。そのうちに、」などあいまいな事を言つて、母をだまらせ、ラジオの防空情報に耳を澄ます。
母の苦情が一段落すると、こんどは、五歳の女の子が、もう壕から出ませう、と主張しはじめる。これをなだめる唯一の手段は繪本だ。桃太郎、カチカチ山、舌切雀、瘤取り、浦島さんなど、父は子供に讀んで聞かせる。
この父は服裝もまづしく、容貌も愚なるに似てゐるが、しかし、元來ただものでないのである。物語を創作するといふまことに奇異なる術を體得してゐる男なのだ。
ムカシ ムカシノオ話ヨ
などと、間の拔けたやうな妙な聲で繪本を讀んでやりながらも、その胸中には、またおのづから別個の物語が釀せられてゐるのである。
[#改ページ]
瘤取り
ムカシ ムカシノオ話ヨ
ミギノ ホホニ ジヤマツケナ
コブヲ モツテル オヂイサン
太宰治の他の作品
TORENDIA
走ラヌ名馬
太宰治
走ラヌ名馬
太宰治 ・ 約3分
TORENDIA
作家の手帖
太宰治
作家の手帖
太宰治 ・ 約16分
TORENDIA
東京だより
太宰治
東京だより
太宰治 ・ 約7分
TORENDIA
朝
太宰治
朝
太宰治 ・ 約7分
TORENDIA
魚服記
太宰治
魚服記
太宰治 ・ 約13分
TORENDIA
満願
太宰治
満願
太宰治 ・ 約6分
TORENDIA
走れメロス
太宰治
走れメロス
太宰治 ・ 約28分
TORENDIA
灯籠
太宰治
灯籠
太宰治 ・ 約15分
TORENDIA
I can s
peak
太宰治
I can speak
太宰治 ・ 約5分
TORENDIA
雪の夜の話
太宰治
雪の夜の話
太宰治 ・ 約11分
TORENDIA
猿ヶ島
太宰治
猿ヶ島
太宰治 ・ 約13分
TORENDIA
新郎
太宰治
新郎
太宰治 ・ 約17分