会話一片
本文約580字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
友人同士のAと私による、谷崎潤一郎の『卍』や菊池寛の『半自叙伝』といった最近の文学作品に対する批評的な会話を綴る。彼らは作品の分量の短さに言及しつつ、岡田禎子の戯曲『夢魔』の理智的な作風や、尾崎士郎の『悲劇を探す男』が持つ独特の筆致について語り合う。文壇の動向や作家の力量に対する二人の率直な意見交換を通じて、当時の文学環境と読者としての批評的視点を浮き彫りにする。
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(Aは友Bは私)
A「潤一郎の卍といふのを読んでゐる?」
B「面白さうだ、が余り短いので読まないよ。彼のものは長いのを一時に読むのが愉快だ。本になつたら読む。」
A「僕は大概始めから続けて読んでゐるが相変らず面白いよ。」
B「さう云へば君、菊池寛の半自叙伝は素的に面白いよ。今月だつてたつた二頁しか出てゐないが、これは僕は、毎月何んなに短くても屹度読んでゐる。第一回からずつと愛読してゐる。いつだつたかの所に、入学試験にパスして国へ帰る途中、さすがに嬉しく、汽車のデツキに出て口笛を吹いた――などゝいふようなところがあつたがそんな風ないろ/\一寸した箇所に僕は理屈のない面白味を覚えるよ。」
A「卍にしろ、半自叙伝にしろ、兎も角あんまり短過ぎるね。少くとも里見の大地位の分量を望むね。」
B「うむ。」
A「夢魔(岡田禎子作)といふ戯曲は仲々しつかりしたものだよ。理智的で、堅実な筆致で、そしてぎごちなくない、相当落着き払つた清新味もある。屹度この作家は勉強家で、堅実な歩みを続けて、佳き戯曲家になるだらうと思ふよ。」
B「さうか、ぢや読んで見よう。」
A「それから尾崎士郎の(悲劇を探す男)が力作だつた。この作家は味気ないが、厭味のない、勇敢な作家らしいね。変に暗くもないし、無理な明るさもない、そして何となく薄ら寒くさつぱりとしてゐる。関はず、自由に動いてゐる。」
B「僕もさう思ふ。」
完