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TORENDIA

読書と生活

本文約3,600字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

古典文学や海外名作を愛読する「私」と、都会的な享楽を好む友人Aの対照的な姿を描く。田舎にいた頃、脳内の妄想と闘うために剣術の真似事に耽っていた私は、日常の空虚を古典の世界へ没頭することで埋めようとする。近代のスピードある生活を享受しつつも、心の中では幻想的な書物の世界に安らぎを見出す自身の内面と、読書を通じて築かれる友人との交流を綴る。

牧野信一

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🎧 読書と生活 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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驢馬旅行

友達のAが私の部屋に現はれて云つた。

「また大阪へ行つて来るんだが、土産は何が好い?」

「今日行くの?」

「そのつもりだつたんだが、水泳を見て来たいので明日になるだらう。一処に行かないか、帰りにサニイ・サイド・アツプも観て来たいし、バー・△△にも三十分ほど……」

「その間にダンス・ホールの時間を挟むのを忘れてゐるな。――悉く附き合はう。大阪へは、やつぱり飛行機で行くのか?」

私は、読みかけてゐたステブンスン作「驢馬旅行」にしほりを挟んで、外出の仕度にとりかゝつた。

「あゝ――」

Aは慣れた顔で点頭き、そして机の上の本を取りあげながら、

「感心に、厭に古いものを読んでゐるぢやないか……ゼ・トラベル・オン・ゼ・ドンキイ――面白いか?」

「単語を忘れてゐること夥しい。無闇に字引を引きながらなので、直ぐに飽きてしまふんだが、斯うでもしないと益々英語を忘れてしまひさうなので――時々少しづゝ、そんな風にして読んでゐるのだが、何時読了るか解つたものぢやない。その他に、此処に□冊ばかりあるだらう、あれこれと読むので何れも半分までもすゝんでゐない、春のはぢめの頃から、田舎生活から、附きまとふてゐる本なのだが――」

「……ピルグリムス・プログレツス――か。」

手持無沙汰のAは部屋の隅から書物をとりあげて、その表題を呟くのであつた。「おそろしく生真面目な学生だな。やあ、至るところにアンダー・ラインが引いてあるぜ、赤鉛筆か何かで――。それから、これは何だ、フフツ! ロビンソン漂流記――だつて!」

私は、そんな風に験められたりするとわけもなく顔がほてつて来てならなかつた。私は、読んでゐる間中は、それらの書物のうちに展開されて行く花やかな幻に包まれて吾身を忘れるかのやうな目出度い影響を被る自身を想像してゐた。

「ラ・マンチアのドン・キホーテがあるな、こいつは和訳だね、長いからな――。おやおや、此は何だ、クリステンダムの七勇士――ハツハツハ……」

Aが笑ふ意味が私には解らなかつた。不図気づくとAは、それらの本を抱へながら、凝つと私の顔を眺めてゐた。

「何を人の顔を見てゐるんだ?」

と私が迷惑さうに呟くとAは、

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