TRENDIA CLASSIC

ぎたる彈くひと

萩原朔太郎

1 / 1

ぎたる彈く、

ぎたる彈く、

ひとりしおもへば、

たそがれは音なくあゆみ、

石造の都會、

またその上を走る汽車、電車のたぐひ、

それら音なくして過ぎゆくごとし、

わが愛のごときも永遠の歩行をやめず、

ゆくもかへるも、

やさしくなみだにうるみ、

ひとびとの瞳は街路にとぢらる。

ああ いのちの孤獨、

われより出でて徘徊し、

歩道に種を蒔きてゆく、

種を蒔くひと、

みづを撒くひと、

光るしやつぽのひと、そのこども、

しぬびあるきのたそがれに、

眼もおよばぬ東京の、

いはんかたなきはるけさおぼえ、

ぎたる彈く、

ぎたる彈く。

萩原朔太郎の他の作品