本文へ移動
TORENDIA

赤穗御崎詠草集

本文約480字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

赤穂御崎の風光や日常を詠んだ歌集である。岳の上の静けさや合歓の木の下に立つ妹、沖に停泊する貨物船の様子、潮光園をはじめとする旅館のたたずまいを綴る。さらに、岩場に佇む鳶の姿や、鉄柵の中で餌を求め争う猿の様子などを通して、海辺の風景とそこで生きる生命の息吹を描写する。著者が滞在先で目にした情景を克明に捉え、静かな海と力強い自然、また籠の中の猿に自身の姿を重ねて人間性を洞察する構成となっている。

櫻間中庸

速度
🎧 赤穗御崎詠草集 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

――カムバスを立つ――

岳の上はひたに靜もり妹は合歡の木の下にカムバスを立つ

妹は默して立てりひたすらに海を描かむ心一つに

帆の形面白しなど語らひつ雜草の丘にデツサンをする

――貨物船――

やゝ沖に貨物船はとまりたりデツキを動く人の氣配す

貨物船の投錨の音たかだかと朝の海にひろごりわたる

蟲にたかる蟻の如くに船をめぐり塩運ぶ船集りてきぬ

凪なれど海に寫らず貨物船の朱の船腹はなかばあせたり

――潮光園など――

潮光園對鴎館など好ましき旅館を持つよ御崎の海は

ベランダの朝のてすりにそと凭りて海を見居たる少女を想ふ

潮光園のベランダはよろしやゝ沖に眞赤な貨物船の點景を持つ

赤き屋根白きベランダたへまなく青き海風さやさやと入る

――鳶――

海にすめば海になれたり鳶三羽怒濤の岩に降りて動かず

曇り日の空は低くして南風に吹かれて鳶はその空に居り

蝉をついばみ鳶はましぐら昇りゆくその猛しさは心にくきや

――猿數多鐵柵の中に飼ひてあれば――

鐵柵に猿は並びぬ眼をむきて手をさしのばし物乞ふかたち

怒り悲しみ恐れはすれど猿なれば笑ひを何處かに忘れたる如し

餌に寄りて爭ふかたち猿なればわれら笑ふもわれらも似たり

完

櫻間中庸の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本