本文へ移動
TORENDIA

化学調味料

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

化学調味料が料理に及ぼす影響と、料理人が目指すべき調理のあり方を綴る。天然の食材が持つ天与の味を尊重し、それを最大限に活かすことが重要であると説く。安易な添加に頼ることで素材本来の味が損なわれることを危惧し、だしや調味料を用いて自ら味を調える大切さを論じる。化学調味料の真の活用法を見極め、自然の持ち味を損なわないよう工夫を凝らすべきだという料理哲学を提示し、安直な利用を戒める。

北大路魯山人

速度
🎧 化学調味料 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

化学調味料は近来非常に宣伝されているが、わたしは化学調味料の味は気に入らない。料理人の傍らに置けば、不精からどうしても過度に用いるということになってしまうので、その味に災いされる。わたしなどは化学調味料をぜんぜん調理場に置かぬことにしている。化学調味料も使い方でお惣菜的料理に適する場合もあるのだろうが、そういうことは純粋な味を求める料理の場合には問題にならない。今のところ、純粋な味を求める料理のためには、なるだけ化学調味料は使わないのがよいと思う。上等の料理、最高の料理には、わたしの経験上化学調味料は味を低め、かつ味を一定していけないようだ。こぶなりかつおぶしなりのだしで自分流に調味するのがいちばんいい。

たとえ化学調味料がいいとしても、物にはそれぞれ千差万別の持ち味があるのだから、こればかりは人間の力ではどうすることもできないものだといえよう。それを化学調味料という一つの味で、日本料理・中国料理・西洋料理と調味するのは無理である。そんなことをするくらいだったら、自由自在に、それぞれの持ち味をとり入れたらよいのであって、それに砂糖・塩・酢・酒などで補えばよろしい。

化学調味料も死んだ味を生き返らせる意味で、ある場合はよろしい。わたしのところでは百グラムのカンだと三年たってもまだなくならない。ほんとうに化学調味料を生かして使っているのは、わたしだけだといえるだろう。来客料理、あるいは、わたし一人の料理の場合に使ってはいるが、機微を得た使い方をして、生かしているのである。

化学調味料を使用すれば、不精者にはまことに都合がよろしい。だが、これらのひとびとは、味の低下をもたらす元凶だといいたい気がするのである。彼らは化学調味料の真の活用法を知らない徒輩といえよう。

昔、わたしが星岡で料理の講習をしていた時に「味の素」社長夫人が聴講生のメンバーに加えて欲しいといってきたことがあった。わたしはその時の講習で「味の素をなるべく使用するな、料理が台なしになる」といっていたのだから、夫人が満座の中でそれを聞くにたえないだろうと思い「あきらめなさい」と言付けたことがあった。

北大路魯山人の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本