TRENDIA CLASSIC

特殊部落と細民部落・密集部落

喜田貞吉

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従来普通に特殊部落と云っておった我が同胞中の或る部族のことを、近ごろ内務省あたりでは、細民部落といっている。細民とは貧乏人の事である。なるほど特殊部落には貧乏人が比較的多いから、その多数についてこれを細民部落というのも、あながち理由のないことではないが、その実この部落にも細民でないのが少くなく、所謂特殊部落以外にも真に細民部落と呼ぶべきものが多いのであるから、この侮辱した様な名称が妥当でない事は言うまでもない事である。近ごろさらにこれを密集部落というものもある。なるほど彼らの多数は陋屋密集の状態にいるから、これを密集部落というのもまた理由のない事ではないが、その実地方によっては密集しておらぬのも少くなく、特殊部落以外にも事実上真に密集部落と呼ぶべきものも多いのであるから、この名称もまた妥当とは言いにくい。

最近の新聞を見ると、しばしば普通の貧民窟の事を、細民部落とも密集部落とも書いた場合がある。これ実に真を得たもので、自分はこの語がかくの如くに、所謂特殊部落以外のものにも用いられ、その代りに所謂特殊部落に於いても、もはや改善救済を要せぬ様なものは、この包括したる名称から除外する様になるのを希望するものである。しかしながら、かくなったでは、所謂特殊民の意味はなくなってしまい、何らかの必要上、特殊民を区別して表わそうとする場合の目的は、それでは副わぬものであることを承知せねばならぬ。

部落の名称については、自分は別にこれを論じておいた。したがってここにはこれらの名称の是非を論じようとするのではない。所謂特殊部落が、何が故に細民部落と言わるるまでに細民の多い部落であり、何が故に密集部落と言わるるまでに、住居の密集した部落であるかということを、歴史上から観察してみたいのである。

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