この小冊子はいかにして融和を促進すべきかということを主として説述したもので、いわゆる特殊部落民なるものは、決して普通部落民と筋の違ったものではなく、ただ昔の落伍者のある者が、その択んだ職業によって、当時の社会の迷信と、階級的意識の犠牲となったにほかならぬということを述べたに止どまり、私の特に宣伝したいと思うところの、歴史的の説明にはあまり多く及ぶことができませんでした。よって私はそのうちに、別に「いわゆる特殊部落の由来」とでもいう小冊子を発行してもらって、本書第六章に述べたところをさらに敷衍してみたいと思っております。本書をみて下さった方々は、必ずその書をも読んで下さることを、今から希望しておきます。 大正十四年十二月二十五日 喜田貞吉識 [#改ページ]
1 改善と解放
融和とは何ぞや。もと別々になっていたものが、すっかり融け合って、まったく一つのものになってしまうことです。融和促進とは何ぞや。その融和を催促して、早く実現せしめようとすることです。わが国には今に至ってなお世間の多くの人々が、ある一部の人々を差別して、あれは特殊部落だ、特殊部落民だなどといって、これを排斥する場合がないでもありません。これがためにその差別される側の人々が、直接間接に受ける有形無形の損害は、実に非常なものでありますが、差別している側の多数の人々は、あまり深くそんなことを考えてみようともしないのです。これはまことに不都合千万な次第で、ただにこれを解放なされました一視同仁の、明治天皇陛下の大御心にそむき奉るものであるのみならず、また同一の権利を与え、同一の義務を負わすところの国法を無視したことであるのみならず、これを広く人道の上からいっても、また国家社会の福利の上から考えても、到底許すべからざる罪悪であると申さねばなりません。