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TORENDIA

ひじりの家

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

日向路の延岡で、かつて土持家の兵法師範であった谷山家が住まう山寺の竜仙寺を訪ねる様子を綴る。著者は、修験の職を廃されながらも古来の姿を守り続ける法印に出会い、かつて津軽で対面した聖の姿を重ね合わせる。戦国の気風を今に伝える山伏としての誇りと、変転する時代のなかで次代への継承に悩む家門の寂莫たる影を通じ、日本の伝統的な信仰と生活が辿る運命を描く。

柳田國男

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🎧 ひじりの家 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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日向路の五日はいつも良い月夜であつた。最初の晩は土々呂の海浜の松の蔭を、白い細かな砂をきしりつゝ、延岡へと車を走らせた。次の朝早天に出て見たら、薄雪ほどな霜が降つて居た。車の犬が叢を踏むと、それが煙のやうに散るのである。山の紅葉は若い櫨の木ばかりだが、新年も近いのにまだ鮮かに残つて居る。処々の橋の袂、又は藪の片端などに、榎であらうか今散りますとでも云ふやうに、忽然として青い葉をこぼし始め、見て居るうちに散つてしまふ木がある。土持殿の御支配の頃から、否々皇祖御東征よりも更に以前から、海に近い県の里の野原では、寒い霜夜の月の明方ごとに、斯うして物の緑が土に帰して居たのであらうが、或時或旅人が通り過ぎて、之を美しいと見るのは瞬間であるなどゝ、自分は有りふれた斯んな事を考へ出した。それといふのも自分が今尋ねて行く人の境涯が、余り我々の生活と変つて居る事を、想像しながら来たからであつた。

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