TRENDIA CLASSIC

おばけの声

柳田國男

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オバケ研究の専門雑誌が、最近に盛岡から出ようとしている。又宮崎県の郷土志資料には、あの地方の妖怪変化の目録が、先々月から連載せられている。ばけ物はもちろん至って古い世相の一つではあるが、それを観ようとする態度だけがこの頃やっとのことで新しくなり始めたのである。私たちの見た所では、人が今日の問題などと珍しがるものでも、たいていは以前何度となく、だれかが考えてみたものばかりだ。今頃だしぬけに現われてくるという問題は、もうこの人生にはない方が当り前である。単にこれまで気のつかなかった実例、それを機縁として新しく見直そうとする心持、今一つはむしろ久しい間ほったらかしていたという事実が、次々に問題を新たにしてくれるのである。この意味からいうと、ばけ物なども大いに新しい部類に属する。たとえばわれわれがこれに興味を抱いているというと、すぐ「あるものかないものか」を問おうとする人が、まだ世間には充満しているのである。こうした一方からしか問題に近よることのできぬ人たちが、いわば現代のためにいろいろのおもしろい題目を貯蔵しておいてくれたので、新たな怪談と観察との学問が、ちょうど起こらずにはおられぬように世の中はなっている。

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