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TORENDIA

女流作家

本文約7,000字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

小森と栄子は映画試写会に出かけるが、期待とは裏腹に失望する。その後、二人はかつて唯一の女流作家であったT女史の作品について語り合う。芸術への情熱を燃やす栄子は、T女史の才能を惜しみつつ、自身の創作への意欲を新たにする。映画の表面的な技巧に限界を感じた二人は、帰宅後にT女史の小説を読み耽り、作家として生きることの厳しさと芸術の尊さを噛みしめながら、自身の創作に向き合おうと決意する。

徳田秋聲

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昨夜[#「昨夜」は底本では「咋夜」]同伴が二人できて、栄子は或る日本ものゝ映画の試写を見に行きに、小森をも誘つた。その招待券の小森へも来たのは、つひ二三日前のことで、彼は栄子が工合のわるい体を悲観してゐるので、仕事が一つ片づいたところで、何うせ詰らないとは知りながら、舞踊好きな彼女を観劇に誘つて、それだけでも見ようとおもつて家を出たのであつたが、その間ぎわに其招待券を手にしたのであつた。

悦んで仕度をして栄子は下宿へ帰つて行つた。そして二人一緒に出たのであつた。

「活動の招待券が来てゐた。」小森は途中その話をした。

「どこ?」

「××会館。『彼をめぐる五人の女』とかていふんだよ。好いの。」小森は彼女にきいた。

「見たい! 五人の女優が出るのよ。前触が大変なの。」

栄子は有名なその五人の女優の噂などして、小森に聞かせた。その時にかぎらず、小森は栄子から映画女優の話を、折にふれては聴かされてゐたが、中でも教養のあるY・Oのこととなると、話手にも興味があるとみえて、熱心に語るので、小森も一度見たいやうな気がしてゐた。

「ぢや一度見てみよう。」

その夜の観劇も失望に了つた。

「勉強するわ。勉強しませうね。何処へ行つたつて、何を見たつてもう私達には何ものも与へられないのよ。時間を無駄に費した悔ひが、仕事の方へ気持を駆つてくれるだけなのよ。」

さう云ふ栄子の言葉や気持に、動もするとだらけがちな気分を引締められさへする小森であつた。彼女は書きはじめたり読みだしたりすると、それに没頭しきつて、夜の明けるのも知らないのであつた。何処へ行つても彼女の心はひたすらに芸術を思ひ詰めてゐた。何んなに熱のあるときでも、書くことの方が彼女を悩ませもし、楽しませもするのであつた。

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