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TORENDIA

癲狂院外景

本文約300字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

夕暮れの癲狂院の寂寞とした光景と、坂を上ってくる青い肩掛けの娘。誇り高き台座からずり落ちた自分の魂が、その娘にひざまずくと詠む富永太郎の詩。

富永太郎

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🎧 癲狂院外景 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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夕暮の癲狂院は寂寞として

苔ばんだ石塀を囲らしてゐます。

中には誰も生きてはゐないのかもしれません。

看護人の白服が一つ

暗い玄関に吸ひ込まれました。

むかふの丘の櫟林の上に

赤い月が義理で上りました

(ごくありきたりの仕掛です)。

青い肩掛のお嬢さんが一人

坂をあがつて来ます。

ほの白いあごを襟にうづめて

脣の片端が思ひ出し笑ひに捩ぢれてゐます。

――お嬢さん、行きずりのかたではありますが、

石女らしいあなたの眦を

崇めさせてはいたゞけませんか。

誇らしい石の台座からよほど以前にずり落ちた

わたしの魂が跪いてさう申します。

――さて、坂を下りてどこへ行かうか……

やつぱり酒場か。

これも、何不足ないわたしの魂の申したことです。

完

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