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TORENDIA

鳴雪句集

本文約9,200字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

俳人・内藤鳴雪が編纂した本作は、師と仰ぐ正岡子規との交流や俳句指導を受けた経緯を回想する緒言とともに、四季折々の情景を詠んだ句を収める。明治時代の寄宿舎で子規に見出されて以降、古典研究や討論を通じて独自の俳風を築いていく過程が綴られる。本書は、生活の端々に見出す季節の移ろいや人々の営みを叙情的に描き出し、明治四十一年当時の生活感や感性が反映された数々の句を通じて、日本の伝統的な詩歌の形を今に伝えている。

内藤鳴雪

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緒言

此の集を出すに方つて、子規居士と余との関係を思ひ出さずに居られぬ。居士は余の俳句の指導者である。而して是れは誰れも知る所で、今、改めて言ふの要もないから嘗て居士の生前に余の物した一二の文を摘記して、いさゝか今昔の感を叙する代りとした。

憶ふ昔と云ふ程でもないが、明治二十五年の一月其頃寄宿舎に居た子規子始二三の人が俳句と云ふものを作るので、僕も少々真似がして見たくなつて、

四十五の夢をさまして初日の出

元日や仏に成るも此の心

と遣つたが、どうも恥しいので人に見せられない。其後暫くたつて、一寸子規子に見せた。すると、是はほんたうの発句になつて居て中々面白い、と意外の賞賛(実は奨励)であつたので、僕も遂に乗気が出来て来た。それから宿題や競吟などと毎日のやうに勉強して、傘百句唐辛子百五十句などと随分沢山作つた。然るに諸子からは余り評判が好くないのみならず、自分で今度は出来たと思つた句が不首尾で、是れはいけないと思つた句にお点がつく。一向何の事か分らない。少々腹も立つて来た、畢竟するに標準と云ふものがなかつたからで、ありやうはまだ一部の句集も熟読して居なかつたのである。そこで、どうかして一番諸子の意表に出る進歩がして見たく、それには古人の句集を読むのが好からうと思ひ、其頃諸子仲間で猿蓑を貴んで居ることを知つて居たから、内々之を研究した。其傍に作つた句が、

山寺は松より暮るゝ時雨かな

しぐるゝや母屋の小窓は薄月夜

初霜を戴き連れて黒木売

から/\と日は吹き暮れつ冬木立

吹きはづす板戸の上を霰かな

此外まだ四五句もあつたらう。或る日之を子規子に見せて、今度は責任を以て作つた、批難があるなら答弁すると冗談半分に云つた。そこで子規子はつく/″\と吟じて居たが、頗る御機嫌顔になられて、成程是は大分様子が変つた、どれも面白い、どうしたのかと問はれたから、実は内々猿蓑を読んだと白状して大笑ひになつた。是が何でも同年の十月頃であつて、やつと諸子の仲間入が出来たのである。其後二三年間、即ち碧子虚子々などの勇将が現はれて来らるゝまでは僕も少々威張つて居た。(ホトヽギス三十二年七月号碧子の俳句評釈の文中摘記)

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