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TORENDIA

告げ人

本文約7,800字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

晩秋の雨降る鎮守祭礼の宵、源四郎の家へ生みの母の訃報を伝える告げ人が訪れる。かつて精神を病み離縁された母は、精神的苦痛を抱えていた父や、母を慕う娘のお政にとって複雑な存在であった。無惨な最期を案じていたお政は、安らかな往生を聞かされて激しく動揺し涙に暮れる。騒ぎが収まり翌朝、忌中の札を掲げた家で、お政は一晩で感情を内に秘める術を覚え、密かに母の喪に服すことを通じて周囲から賢明な女性としての評価を得る。

伊藤左千夫

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雨が落ちたり日影がもれたり、降るとも降らぬとも定めのつかぬ、晩秋の空もようである。いつのまにか風は、ばったりなげて、人も気づかぬさまに、小雨は足のろく降りだした。

もうかれこれ四時過ぎ五時にもなるか、しずかにおだやかな忌森忌森のおちこち、遠くの人声、ものの音、世をへだてたるものの響きにもにて、かすかにもやの底に聞こえる。近くあからさまな男女の話し声や子どもの泣き騒ぐ声、のこぎりの音まき割る音など、すべてがいかにもまた、まのろくおぼろかな色をおんで聞こえる。

ゆったりとおちついたうちにも、村内戸々のけはいは、おのがじしものせわしきありさまに見える。あす二十二日がこの村の鎮守祭礼の日で、今夕はその宵祭りであるからであろう。

源四郎の家では、屋敷の掃除もあらかたかたづいたらしい。長屋門のまえにある、せんだんの木に二、三羽のシギが実を食いこぼしつつ、しきりにキイキイと鳴く。その声はもの考えする人の神経をなやましそうな声であった。ほうきめのついてる根元の砂地に、やや黄ばんだせんだんの実が散り乱してある。どういうものかこの光景は見る人にあわれな思いをおこさせた。

源四郎はなお屋敷のすみずみの木立ちのなか垣根のもとから、朽ち葉やほこりのたぐいをはきだしては、物置きのまえなる栗の木のもとでそれを燃やしている。雨になったのでいっそうせいてやってるようすである。もとより湿けのある朽ち葉に、小雨ながら降ってるのだから、火足はすこしも立たない。ただプツプツとけむるばかり、煙は茅屋のまわりにただようている。源四郎はそれにもかかわらず、どしどしといやがうえにごみをのせかける。火はときどき思いだしたように、パチパチと燃えてはすぐ消えてしまう。朽ち葉のくさみを持った煙はいよいよ立ち迷うのである。源四郎は二十二、三の色黒い丸顔な男だ。豆しぼりの手ぬぐいをほおかむりにして、歌もうたわずただ黙もく掃除している。

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