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TORENDIA

家庭小言

本文約7,800字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

現代社会に蔓延する家庭問題への論究や、家庭生活を説く書籍の氾濫を論じる。家庭の幸福や趣味は各人の性格や環境に由来する自然な産物であり、他者が標準を設けて教え導くことは本来不可能であると説く。根本である人格や修養を欠いたまま、うわべの議論や流行に流されて家庭を語ることは、かえって幸福を損なう恐れがあると指摘する。自らの家庭を築くには、まず主人自身が日々の生活を通じて精神的な実態を伴うことの重要性を説く。

伊藤左千夫

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一

近頃は、家庭問題と云うことが、至る所に盛んなようだ。どういう訳で、かく家庭問題が八釜敷なって来たのであろうか。其の原因に就いて考えて見たらば、又種々な理由があって、随分と面白くない原因などを発見するであろうと思われる。乍併、此の家庭問題を、色々と討究して、八釜しくいうて居る現象は、決して悪い事でない、寧ろ悦ぶべき状態に相違ないのであろう。只其の家庭問題を、彼是云うて居る夫子其の人の家庭が、果して能く整うて居るのであろうか、平生円満な家庭にある人などは、却って家庭問題の何物たるかをも知らぬと云うような事実がありはせまいか、是れは少しく考うべき事であると思う。予は現に、人の妻と姦通して、遂に其の妻を奪った人が、家庭の読物を、発刊しようかなどと云って居るのを、聞いたことがある。猶予自身の如きは、幸に家庭の不快など経験したことがないので、家庭の問題などは、主人の心持一つで、無造作に解決せらるるものと信じて居った。殊更に家庭の円満とか家庭の趣味とか、八釜しく云うことが、却っておかしく思われて居った。

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