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TORENDIA

牛舎の日記

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

明治三十四年の本所を舞台に、酪農を営む著者が日々を綴る。巡査による口蹄疫の疑いへの対応や、健康診断に訪れる獣医とのやり取りを通じて、当時蔓延していた疫病の緊張感を描く。また、牛の出産と子牛の夭折、その後の処置といった牧場での日常や、男たちとのやり取り、季節の移ろいと牛の世話に追われる生活の細部を克明に記録し、明治時代の牧場経営における現実を静かに伝えている。

伊藤左千夫

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一月十日 午前運動の為め亀井戸までゆき。やや十二時すぐる頃帰て来ると。妻はあわてて予を迎え。今少し前に巡査がきまして牛舎を見廻りました。虎毛が少し涎をたらしていました故鵞口瘡かも知れぬと申して。男共に鼻をとらして口中をよおく見ました。どうも判然はわからぬけれど念のため獣医を呼んで一応見せるがよかろうと申して。今帰ったばかりです どうしましょうと云う。予はすぐ其の足で牛舎へはいって虎毛を見た。異状は少しもない。老牛で歯が稍鈍くなっているから。はみかえしをやる度自然涎を出すのである。此牛はきょうにかぎらずいつでもはみかえしをやる度に涎を出すのはきまって居るのだ。それと角へかけて結びつけたなわの節が。ちょうど右の眼にさわるようになっていたので涙を流していた。巡査先生之を見て怪んだのである。獣医を呼ぶまでもなしと予が云うたので。家内安心した

十一日 午後二時頃深谷きたる。当区内の鵞口瘡は此六日を以て悉皆主治したとの話をした

十二日 午前警視庁の巡回獣医来る 健康診断のためである。例の如く消毒衣に服を着かえて。くつを下駄にはきかえて牛舎を見廻った。予は獣医に府下鵞口瘡の模様を問うた。本月二日以来新患の届出でがないから。もう心配なことはなかろうとの獣医の答であった

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