TRENDIA CLASSIC

全羅紀行

柳宗悦

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昨年の旅はまた今年の旅を誘った。朝鮮を訪う人は多いが、私たちのような目的で足を運ぶ者は始めてかもしれぬ。古い物を求める人はあっても、新しい物を捜す者は絶えてなかった。だが古い習慣をよく守る朝鮮では、昔を受けてまだ無造作に美しい品物が方々で出来る。昔の朝鮮を見たいなら、今の朝鮮を見るに如くはない。私たちは今も続いて出来る品物に何があるか、それをもっと見たかったのである。更にまたどんな環境や心持から、それらの物が生れてくるのか、その根元をつきとめたかったのである。混り気のない朝鮮を見るためには奥地へと入らねばならない。

今度選んだのは全羅南北の両道であった。そこは風土の利から材料に恵まれ、昔から様々な工藝品が発達していたのである。それに昨年行き得なかった土地でもあった。私たちはこの全羅行に長く憧れを抱いた。

昭和十二年五月二日。早朝晴れ渡る半島の島々に迎えられて釜山に上る。京城からこの度の行を共にする浜口良光、土井浜一両氏と埠頭で落ち合う。朝鮮は何時来てもすがすがしい。去年もこの頃であった。今度また揃って出かけることの出来たのも大きな悦びである。

まずこの地の蒐集家竹下隆平氏を訪ねた。竹下氏は朝鮮瓦の蒐集家として聞えているが、その蒐蔵の中には多くの見事な磚や瓦の外に、菓子型、筆筒、真鍮の香炉など優品が多い。いずれも忘れ難いものであった。随分数多くを見ている吾々も、思いがけないものに逢って、新しい興奮を覚える。

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