台湾の民藝について
本文約11,000字 ・ 読了時間 約23分
あらすじ(AIが作成しました)
柳宗悦が台湾各地を巡り、生活に根差した民藝品や建築、土地の風景を視察した記録を収める。林本源邸の執事牌、竹行李、士林の竹細工、各地の神棹や陶器など、台湾の日常に息づく工藝の力強さと美しさを論じる。また、現地の生活様式や文化を尊重する重要性を説き、当時の日本の生活文化が失いつつある強靭さと伝統的な技術の価値を再発見しながら、真の美意識のあり方を問い直す内容となっている。
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上
○林本源邸 とにかくえらい力だね。仮りにこんな家にわれわれに住めといわれても、とても住めないね。これを住みこなすのは大変な力だ。生活の中にこれだけの夢を現わすことはたいしたものだ。
○林本源邸所蔵執事牌の字 (特にそのうちの数枚を指して)これなぞはことに面白いね。これは制限されたスペースの中に所定の字数を填めなければならないという制約から生れた美しさだ。工藝ではしばしば不自由が美を自由にさせる。
○竹行李(台北市内所見) 隅の籐の編み方は旨いものだ。これなら隅がいたむことはないだろう。実用が招いた美しさだ。革がなくなってかえってよくなったね。
○菊元百貨店売品牛角製煙草セット (黄牛角製煙草筒をとり上げ)この筒だけなら見所がある。西洋ではこれで出来たコップがあるが、光線が透って中の液が実に美しく見える。台湾のように暑くて、飲物がほしい土地では、この材料を何とか生かすといいね。
○穿瓦衫(板橋及び士林にて) なかなか味の好いものだ。これは始めてのものだ。如何にも建築を建物らしくするやり方だなあ。(士林渡口の籾庫を見て立石鉄臣君を顧みながら)これは絵になるね。
○士林刀(士林の製作者の家を数軒訪ねる) どうにかして一本手に入れたいものだが。さっきの道端の子供のもってたのを譲ってもらえばよかったね。こんな品物が絶えるのは惜しい。
○淡水旧英国領事邸宅 いい建物だ。これを貰って台湾の民藝館を作ればいいじゃないか。
○新竹市城隍廟 信仰がまだ生きている。繁昌しているという点だけなら成田の不動さんなどはあるが、日本中でもこんなに信仰と生活がなまなましく結びついているのはないね。