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TORENDIA

静安寺の碑文

本文約5,300字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

上海の静安寺にある外人墓地を訪れた語り手は、プラターヌの花が舞う静謐な境内の中で、亡き人を想う言葉が刻まれた多様な墓碑文を書き写す。かつて芥川龍之介の勧めでこの地を訪れた語り手は、租界という特殊な空間が織りなす東洋と西洋の混在、そして伝統や宗教観の衝突を考察する。上海の豊麗な悪の都としての姿と、易という独自の運命観を持つ支那人の精神性、さらには世界政治の行く末について思索を巡らせる。

横光利一

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🎧 静安寺の碑文 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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静安寺の境内は名高い外人墓地である。大きなプラターヌの鬱蒼としている下に墓石が一面に並んでいる。綿のようなプラターヌの花が絶えず舞い落ちて来て、森閑と静ったあたりに動くものは、辷る大理石の墓石の面をようやく這いのぼった玉虫の、ばさりと落ちる音だけである。私は異国からはるばるとここへ来て死んだ人々の名を読み、それらの悲しい碑文を幾つも書き写したことがある。

Our life and our joy who only spoke and lived to fill our hearts with bless.  南京路を真直ぐに同文書院の方へ行った郊外近くにある寺だ。私は黄包車に乗って一人行ったのであるが、車夫を門前に待たせて墓石の文を写せるだけ書きとっていってみた。どの文章にも残った人の悲しみと追慕の情が、短い文のリズムと句意に溢れていて名文をなしている。

A precious one from us has gone. A voice we loved is stilled. A place is vacantly in our home which never can be filled. Faithful and true till death.

さまざまな形の墓の間にプラターヌの花が積っていて、この寺の境内の美しさと静けさは上海第一と云われている。墓場が名所となるのも街に伝統のない明るさであるが、外人の墓地というものは、死後までわれわれに人工の世界を感じさせる。薔薇の花のまだ萎れぬ間を、白砂を敷きつめた径が方形に通っていて、僧服を着た宣教師の静に歩くひまにも、ばさりばさりと響く音は、大理石の面から辷り落ちて来る玉虫の甲の音である。

To know him was to love him. Since thou best called me blessing what most I prized, it neer was mine I only yield thee what is thine.

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