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TORENDIA

書簡 大杉栄宛

本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

千葉県御宿の旅館に滞在中の著者が、大杉栄に宛てた書簡を綴る。安成二郎の訪問を機に、大杉の騒動や周囲の女性たちとの複雑な関係性について自身の心境を吐露する。相手を介して繋がる女性たちとの理想的な関係や、自身の愛情に対する冷静な自己分析を深めつつ、日常の風景や大杉への断ち難い思慕を率直に記し、日々の便りを切望する心情を伝える。

伊藤野枝

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🎧 書簡 大杉栄宛 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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宛先 東京市麹町区三番町六四 第一福四萬館 発信地 千葉県夷隅郡御宿 上野屋旅館

今、安成(二郎)さんがお帰りになつたところです。私は何もお話も書きもしないつもりでしたけれど、折角あなたの紹介でこんな処までゐらしつたのですから、書くだけは御約束いたしました。けれども、まだ何を書かうと云ふあてもつきませんのです。でも、大変静かに気持よくお話いたしました。

あなたのけんかの話を伺ひました。どうしてそんな乱暴な事をなさつたの。堺さんまでひどい目にお合はせになつたのですつてね。虫の居所でも悪かつたのですか。野依さんは何を云つたのですか。何んだか気になりますわ。私の名も出たんですつてね。何んだかお目にかかつてお聞きしたいやうな事が沢山ありますわ。

安成さんがお帰りになる時に一緒に行きたいやうでしたわ。

それから保子さんのこと昨日の手紙に書きましたが、あれは取消しませう。今日、安成さんから少しばかりお話を伺ひました。私の想像してゐる方とは大ぶ違ふやうですから。もしさうでしたら、会ふだけ無駄だと思ひますから。もしあなたの保子さんに対するお考へが本当に委しく伺へれば本当にいいと思ひますけれど、それも無理には伺ひたくありません。

今朝から私はいろ/\に考へてゐましたの。私の神近さんと保子さんに対する本当の心持を知りたいと思ひましてね。ですけれど、私は矢張りどちらの関係もあなたの生活の一部として是認するだけで、あなたと保子さん、それからあなたと神近さん、あなたと私、と云ふ風に切り離しては考へられないのです。要するに私が、神近さんと、或は保子さんとあなたとの間の事に就いて、お互ひに理解し合つたり認め合つたりすると云ふ事の方を、現在の一番大事な事のやうに考へてゐたのは、まだ本当に自分であなたと私との関係がのみ込めなかつたからだと云ふ風に考へられて来ました。

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