TRENDIA CLASSIC

生物学より見たる教育

丘浅次郎

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教育の書物を開いて見ると「教育トハ一定ノ目的ト方法トヲ具ヘテ教育者ガ被教育者ニ加フル所ノ働作ナリ」などとむずかしい定義を下して、これは人類のみに限るものであると書いてあるが、教育学者の言うところの教育はあるいは人類に限られてあるか知らぬが、教え育てるということは動物界において決して珍しいことではない。元来教育という字の原語の Education, Erziehung などという字はいずれも引き出すという意味で、被教育者の生来持っている種々の能力を引き延ばし発達せしめること、すなわち知能を啓発することをいうのであろうが、教育という字をこの意味に取れば教育を行なう動物はいくらもある。まず実際教育を行なう動物の例を二つ三つ掲げて、それから教育の生物学上の意義を述べよう。

小鳥類の子供が親あるいはその他の成長した同胞から歌うことを習うはたれも知っていることで、多少種類の違った鳥でも卵の時からあるいは幼い雛の時からある他の鳥に育てさせると、成長する間に養い親の歌を覚えて、自分の種属に固有な歌とは全く違った歌を巧みに歌いうるようになる。小鳥を熱心に飼う人は自分の鳥の声をよくするためには、よい声を有する鳥のそばへ連れて行ってこれを習わせ、またはこれと競争させてますます声を発達させようとはかるが、これを見ても鳥の声などは教えようによっていかようにも進歩させることのできるものであることがわかる。

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