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TORENDIA

十和田湖

本文約15,600字 ・ 読了時間 約32分

あらすじ(AIが作成しました)

十和田湖を訪れた著者は、保勝会や同行の医師、画家、写真班らとともに湖畔や沿道の景勝地を巡る。旅の道中での自然との対峙や、宿泊先での食事や交流を通じて感じた十和田の風景の荘厳さ、そして湖の深秘をこの随筆は綴る。神聖な場所への礼儀を重んじ、現地の人々との関わりや、同行者たちの個性的な活躍を交えつつ、湖の全景を偉大な胡桃の実に喩えて、その凄麗な魅力を描き出す。

泉鏡太郎

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一

「さて何うも一方ならぬ御厚情に預り、少からぬ御苦労を掛けました。道中にも旅店にも、我儘ばかり申して、今更お恥しう存じます、しかし俥、駕籠……また夏座敷だと申すのに、火鉢に火をかんかん……で、鉄瓶の湯を噴立たせるなど、私としましては、心ならずも止むことを得ませんので、決して我意を募らせた不届な次第ではありません。――これは幾重にも御諒察を願はしう存じます。

――古間木(東北本線)へお出迎ひ下すつた以来、子の口、休屋に掛て、三泊り。今また雑と一日、五日ばかり、私ども一行に対し……申尽くせませんまで、種々お心づかひを下さいましたのも、たゞ御礼を申上げるだけでは済みません。御懇情はもとよりでございますが、あなたは保勝会を代表なすつて、湖の景勝顕揚のために、御尽力をなすつたので、私が、日日社より旅費を頂戴に及んで、遥々と出向きましたのも、又そのために外なりませんのでございますから、見聞のまゝを、やがて、と存じます。けれども、果して御期待にかなひますか、如何か、その辺の処は御寛容を願ひたう存じます。たゞしかし、湖畔五里余り、沿道十四里の間、路傍の花を損なはず、樹の枝を折らず、霊地に入りました節は、巻莨の吸殻は取つて懐紙へ――マツチの燃えさしは吹き消して、もとの箱へ納めましたことを憚りながら申し出でます。何は行届きませんでも、こればかりは、御地に対する礼儀と真情でございます。」

「はあ――」

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