覆面の舞踏者
本文約14,800字 ・ 読了時間 約30分
あらすじ(AIが作成しました)
世の刺激を求める会員十七名で構成される秘密結社・二十日会に所属する語り手は、会長が企画した仮面舞踏会に参加する。会員の妻たちを招き、相手の正体を知らぬまま踊るこの催しで、語り手は番号札の誤認により、他人の妻と組み踊るという過ちを犯す。後に自身が招いた波紋と、友人・井上次郎と自身の妻の間で生じた関係の可能性に気づき、平穏な日常が崩壊していく過程を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一
私がその不思議なクラブの存在を知ったのは、私の友人の井上次郎によってでありました。井上次郎という男は、世間にはそうした男が間々あるものですが、妙に、いろいろな暗黒面に通じていて、例えば、どこそこの女優なら、どこそこの家へ行けば話がつくとか、オブシーン・ピクチュアを見せる遊廓はどこそこにあるとか、東京に於ける第一流の賭場は、どこそこの外人街にあるとか、その外、私達の好奇心を満足させるような、種々様々の知識を極めて豊富に持合せているのでした。その井上次郎が、ある日のこと、私の家へやって来て、さて改まって云うことには、
「無論君なぞは知るまいが、僕達の仲間に二十日会という一種のクラブがあるのだ。実に変ったクラブなんだ。謂わば秘密結社なんだが、会員は皆、この世のあらゆる遊戯や道楽に飽き果てた、まあ上流階級だろうな、金には不自由のない連中なんだ。それが、何かこう世の常と異った、変てこな、刺戟を求めようという会なんだ。非常に秘密にしていて、滅多に新しい会員を拵えないのだが、今度一人欠員ができたので――その会には定員がある訳だ――一人だけ入会することができる。そこで、友達甲斐に、君の所へ話しに来たんだが、どうだい入っちゃ」
例によって、井上次郎の話は、甚だ好奇的なのです。云うまでもなく、私は早速挑発されたものであります。
「そうして、そのクラブでは、一体全体、どういうことをやるのだい」
私が尋ねますと、彼は待ってましたとばかり、その説明を始めるのでした。