銀のつえ
本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
仕事をせず遊んでばかりいた男は、夜の道で銀の杖を持つ不思議な老人に出会う。老人は男を眠らせ、墓へ葬る。やがて目を覚ました男は、老人と共に兄や妹、かつての馴染みの場所を巡るが、そこは長い年月が過ぎ去った後の世界であった。老人が消えた後、橋の上で自らが老人になっていることに気づいた男は、再び墓へ帰る決意をする。果たして男はどこへ向かうのか、奇妙な運命の行方を描く。
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あるところに、いつも遊び歩いている男がありました。兄さんや、妹は、いくたび彼に、仕事をはげむようにいったかしれません。けれど、それには耳を傾けず、街のカフェーへいって、外国の酒を飲んだり、紅茶を喫したりして、終日ぼんやりと暮らすことが多かったのでした。
彼は、そこで蓄音機の音楽をきいたり、また、あるときは劇場へオペラを見にいったり、おもしろく暮らしていたのでありました。
ある日のこと、彼は、テーブルの上に、いくつもコップを並べて、いい気持ちに酔ってしまったのです。そして、コップの中にはいった、緑・青・赤、いろいろの酒の色に、ぼんやり見とれていますと、うとうとと居眠りをしたのでした。
もう、いつのまにか、日は、とっぷりと暮れてしまいました。
「ああ、もう帰らなければならない。」と、彼はいって、そのカフェーから外に出たのでした。彼の足は、ふらふらしていました。そして、まだ、耳には、けさしがたまで聞いていた、いい音楽のしらべがついているようでありました。
夜の空は、ぬぐったガラスのように、うるおいを含んでいました。月がまんまるく空に上がって、あたりの建物や、また森影などが、浮き出たように見られたのであります。
彼は、さびしい、広い往来を歩いてきますと、ふいに、そこへわき出たように、一人のおじいさんがあらわれました。そのおじいさんは、白いひげをはやしていました。そして、手に光るつえを持っていました。そのつえは、銀で造られたように思われます。
おじいさんは、彼の歩いている行く手に立って、道をふさぎました。彼は、頭を上げて、おじいさんを黙ってながめたのです。
おじいさんは、なにか、ものをいいたげな顔をしながら、しばらく、口をつぐんで彼のようすを見守っていました。彼は、このおじいさんを見ると、なんとなく体じゅうが、ぞっとして、身の毛がよだちました。おじいさんの目は、氷のように冷たい光を放って、刺すように鋭かったからであります。