動物の私有財産
本文約11,300字 ・ 読了時間 約23分
あらすじ(AIが作成しました)
人間社会で極めて重要な位置を占める私有財産について、動物の習性と比較しながら論じる。猿や鳥、反芻動物などが食物を身体の部位に蓄える様子を「財産制度の裸体画」と位置づけ、財産をめぐる競争や不平等の根源を人間の生物学的な性質と現行の社会制度の両面から分析する。生存競争の必然性や貧富の懸隔が招く社会的な不満と風俗の堕落に触れ、人間社会が抱える構造的な問題を考察する評論である。
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人間社会では財産はきわめて大切なもので、ほとんど生命に次いで貴重なものというてよろしい。財産のない者はささいなことさえも容易にはできぬが、財産のある者は勝手次第なことをなして毫もはばからない。ドイツ語で財産のことを Vermgen(なし得る)と名づけるのは全くこのゆえであろう。試みに Ein Mann ohne Vermgen(財産なき男)と書けば「なし得るなき男」とも翻訳することができるが、かくてはもはや人間一人前の資格はない者と見なさねばならぬ。また治るべき病も財産のないために治し得ぬこともあり、借金の返せぬために首をくくる男もあって、生命が貴いか財産が貴いか判然せぬごとき場合さえすこぶるしばしばある。財産なるものは人間社会ではかくまで重要なものであるが、さて他の動物ではいかん。他の動物では財産はいかに保護せられ、いかに蓄積せられるか、財産は何の役に用いられ、また何代目まで相続せられるか。人間と他の動物との財産制度を比較して見ると、いかなる点までは互いに相一致し、いかなる点において相異なるか。またそのため人間社会にはいかなる結果が生じたか。われらが今ここにいささか述べようと思うのは上のごとき諸問題についてである。