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TORENDIA

西班牙犬の家

本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

愛犬フラテに導かれ、山中を彷徨った主人公は、人里離れた雑木林の奥に、西洋風の瀟洒な家を一軒発見する。主の不在を確信して無断で内部へ踏み込んだ主人公は、室内に溢れる異様な石の水盤や古い時計、外国語の本などを好奇心とともに観察する。しかし、主人の帰宅を待つうちに、自分は魔法のような不思議な空間に迷い込んだのではないかという不安に駆られる。そして、室内から聞こえたはずの人の声と、犬の姿が人間に変わるという不可解な光景を目の当たりにし、困惑と恐怖の中でこの奇妙な家を後にする。

佐藤春夫

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🎧 西班牙犬の家 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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フラテ(犬の名)は急に駆け出して、蹄鍛冶屋の横に折れる岐路のところで、私を待っている。この犬は非常に賢い犬で、私の年来の友達であるが、私の妻などは勿論大多数の人間などよりよほど賢い、と私は信じている。で、いつでも散歩に出る時には、きっとフラテを連れて出る。奴は時々、思いもかけぬようなところへ自分をつれてゆく。で近頃では私は散歩といえば、自分でどこへ行こうなどと考えずに、この犬の行く方へだまってついて行くことに決めているようなわけなのである。蹄鍛冶屋の横道は、私はまだ一度も歩かない。よし、犬の案内に任せて今日はそこを歩こう。そこで私はそこを曲る。その細い道はだらだらの坂道で、時々ひどく曲りくねっている。おれはその道に沿うて犬について、景色を見るでもなく、考えるでもなく、ただぼんやりと空想に耽って歩く。時々、空を仰いで雲を見る。ひょいと道ばたの草の花が目につく。そこで私はその花を摘んで、自分の鼻の先で匂うて見る。何という花だか知らないがいい匂である。指で摘んでくるくるとまわしながら歩く。するとフラテは何かの拍子にそれを見つけて、ちょっと立とまって、首をかしげて、私の目のなかをのぞき込む。それを欲しいという顔つきである。そこでその花を投げてやる。犬は地面に落ちた花を、ちょっと嗅いで見て、何だ、ビスケットじゃなかったのかと言いたげである。そうしてまた急に駆け出す。こんな風にして私は二時間近くも歩いた。

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