TRENDIA CLASSIC
母の死
中勘助
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これらの断片は昭和九年九月の初旬母が重態に陥ったときから十月の初旬その最後のときまでのあいだに書かれたものである。
断片。この愛別離苦のうちから私が人人におくる贈り物は「律法を妄りに人情の自然のうえにおくな」という忠告である。私どもは世の親と子があるように、はたあるべきようにお互に心から愛しあっていながら、すくなくとも私のほうではよくそれを承知していながら真にうち解けて馴れ親しむことができず、いつも一枚のガラスを隔てて眺めてるような趣があった、そこには律法のほかに別にまたいろいろ錯雑した理由、原因もあっただろうけれども。