TRENDIA CLASSIC

生きている忠臣藏

尾崎士郎

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傳承三百年

忠臣藏を上演、もしくは上映すれば必ず大當りをとるといふのが今や一定不變の興行常識とされてゐる。

原作者の竹田小出雲(二代目出雲)も、これだけの魅力と影響力を後世に持續し得るとは夢にも想像しなかつたであらう。(事實は三好松洛と、並木千柳との共同製作であるが)

その流行の底に潜む秘密は今日といへども的確な判斷を下されてはゐない。人はしばしば、作品の樞軸をなす世俗的な倫理觀を問題とする習慣だけを肯定してゐるが、強度の封建性の上に根をおろしてゐる物語的要素に、今日なほ且つ隨喜の涙を流してゐる觀衆はほとんど一人もあるまい。それほど「忠臣藏」は近代的な演劇の外に超越してゐる。それにもかかはらず、何故劇場が滿員になり、映畫館の觀衆が湧きかへるのか。日本の國民性、――といふよりも庶民の生活感情と微妙な接觸を保つてゐるところに「忠臣藏」の存在があるといふ意見も一應尤もであるが、しかし、それならば必ずしも「忠臣藏」にだけ限られたはなしではない。むしろ、「忠臣藏」流行の秘密は、そのやうな本質論の中にあるのではなくて、舞臺の構成と場面の關聯に、歌舞伎の型と約束を無視した自由さがあり、原始的といつてもいいほど素撲で[#「素撲で」はママ]單純な感情を無批判のうちに、知らず知らず唆りたてる要素を遺憾なく備へてゐるからではあるまいか。

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