果物の天国
本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
アメリカの友人から岡山の白桃と二十世紀を食べてほしいと依頼された筆者が、日本とアメリカの果物事情を比較し、日本の果樹栽培技術や栽培環境について考察する。種類の豊富さと味の良さを根拠に、日本こそが果物の天国であると論じ、その要因として長引く秋の気候や栽培技術の発達に注目する。柿や蜜柑など具体的な果物の特徴や海外での評価も交えながら、日本の果物が持つ品質の高さや価値を綴る随筆。
💰 この本を応援する(投げ銭)
この夏、アメリカの友人から妙なことを頼まれた。それは岡山の白桃と二十世紀とを食べておいてくれ、という依頼なのである。この男は、前に日本へ一度来たことがあるが、アメリカへ帰ってからも、どうしても忘れられないのは、白桃と二十世紀との味であるという。ところが、どうしてもあれは、アメリカまで送ってもらうことは出来ない。それで日本へ帰ったら、代りに食べておいてくれ、という依頼なのであった。
日本では、アメリカを果物の天国のように誤解している人がよくある。しかし種類の豊富な点、味のよい点では、日本は果物の天国である。それもこの二、三十年来、とくに果樹の栽培技術が発達したためで、私たちの子供の頃からみると、まるで違った見事な品種が、次ぎ次ぎと出て来ている。
アメリカで聞いた話では、中国地方からアメリカへ移民として行った人たちが、果樹の栽培技術を身につけて、郷里へ帰ったので、それ以来、日本の果物が非常に良くなったということであった。白桃や二十世紀はいうまでもないが、柿などもこの頃は非常に見事なものが出来ている。柿は外国では珍しいもので、昔ベルリンの果物屋などでは「日本のカキ」といって、売っていたものである。柿はドイツ語でもカキである。
アメリカにはパーシモンというものがあって、これは辞書では柿となっているが、まことにつまらないもので、大きさも味も、まるで別物である。まず日本の野生の小さな柿と思えば間違いない代物である。この頃加州の日本人が、日本種の柿を栽培しているので、シカゴなどへも本物の柿が来ているが、これはひどく高くて、われわれの口にははいらない。
蜜柑なども、お正月に食べるごく普通のあの蜜柑が、アメリカでは、相当の貴重品である。オレンジとそれに類似のもの、すなわち柑橘類は沢山あるが、日本の蜜柑のようなものはあまり見当らない。
それで蜜柑の罐詰が、相当量アメリカへ輸出されていて、これは非常に喜ばれている。だいたい食後に、アイスクリームをかけて出すのであるが、かなり値段が高いので、半贅沢品である。パーティの時に出すくらいのもので、一般の家庭ではふだんは一寸食べられない。