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TORENDIA

浮輪

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

ミシガン湖に面したシカゴの夏と、そこで厳格に運用される水泳の規則を綴る。ビーチの賑わいや水難防止のための監視体制、浮輪の使用禁止といった現地のルールを紹介しつつ、自由の国の実態を考察する。さらに、これらの規則を通じた安全管理のあり方について、日本における水難事故防止の観点から安全規則の重要性と遵守のあり方を論じる。

中谷宇吉郎

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🎧 浮輪 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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シカゴはミシガン湖に面しているので、夏になると、ビーチは湖水浴の連中で、たいへんな賑わいである。とくに今年は何十年ぶりとかの暑さで、土曜日曜などは、鎌倉の海岸のような騷ぎである。

湖といっても本州の半分くらいある大きい湖なので、見たところは、全く海の感じである。對岸はもちろん見えない。波もふだんはかなりあって、水難の危險は、いつも注意している必要がある。

砂濱で遠淺になっているところは、所々にしかない。そこをビーチ(サンド・ビーチの略)と稱して、シカゴ市民の夏の第一の遊び場である。水泳を習うというような氣持はあまりないので、たいていは水にはいってボチャボチャやって遊んでいるわけである。

泳げない連中が多いので、監視は非常に嚴重である。見張人のことを生命護衞(ライフ・ガード)といっているが、それが數人いて何時でも注意している。面白いのは、浮輪をもって泳いではいけないことになっている點である。もっとも小さい子供の玩具の浮輪は別問題である。

浮輪をもった方が安全のように思えるが、實はそうではないという。浮輪をもつと、泳げない人でも、ついうかうかと背の立たないところに行くから、かえって危險だというのである。なるほど聞いてみると、そういうこともありそうである。

水浴場を綺麗にすることも、なかなかやかましくて、食物をもって水の中へ入ることはもちろん嚴禁、砂濱でものを食べることもいけない。たいてい砂濱のだいぶ上の方にピクニック場が指定してあって、飮食はそこですることになっている。それで芋の子をころがすような人混みであるが、水はその割に綺麗である。西瓜の皮が浮いているようなことは決してない。

アメリカは自由の國というふうに日本では思われているが、自由という意味が、日本で考えられているのと、大分ちがう。どんなことにも規則がたくさんあって、それを嚴重に守らなければならないことになっている。浮輪をもって泳いではいけないという規則などは、なかなか傑作である。少し滑稽味もあるが、しかし眞面目に考えてみて、其處まで氣を配るのは感心である。

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