あるお百しょうが、とても よくはたらく 一とうの馬をもっていました。
ところが、馬は、だんだん 年をとって、とうとう はたらくことができなくなりました。すると、しゅじんは、たべものをやるのが、いやになりました。
「おまえは、もう、やくにはたたなくなった。それは、わしにも よくわかっているが、しかし わしは、おまえを かわいくおもっている。だから もしも、おまえが、まだここへ ライオンをつれてくるだけの 力をもっているのなら、かっておいてやることにしよう。だが、ひとまず、この馬小屋からでていってくれ。」
こう いって、お百しょうは、馬を、ひろい野原へ おいだしてしまいました。
馬は、しょんぼりと、森のほうへあるいていきました。森へいけば、雨や風を、いくらかはふせげるだろう、とおもったのです。
とちゅうで、きつねにであいました。きつねは、馬にたずねました。
「おまえさん、なんだって、そんなにうなだれて、さびしそうに あるいてるんだね。」
「ああ、あ。よくばりこんじょうってものは、やりきれんよ。いくら、こっちが、ま心をこめて つくしてきても、どうしようもないんだからなあ。
おれは、なが年のあいだ、しゅじんのいうとおりに、いっしょうけんめい はたらいてきた。
そりゃあ 今は、はたけ仕事はできないさ。しかし、しゅじんときたら、おれを、さんざん はたらかせてきたくせに、そのこともわすれちまって、くいものをくれるのがいやで、おれをおいだしちまったんだ。」
と、馬ははなしました。
「なぐさめてもくれないでかね。」と、きつねがたずねました。
「いんや。そのなぐさめかたが、また ひどいんだ。なにしろ、おれが、しゅじんのところへ、ライオンをつれてくるぐらい つよければ、かっておいてやろうって いうんだからな。おれに、そんなことができっこないぐらい、わかりきってるくせになあ。」
と、馬はこたえました。
「ようし、おれが手だすけしてやるよ。おまえさんは、そこへねころがって 手足をのばしていたまえ。ぴくりとも うごくんじゃないよ。死んだようにしてるんだぜ。」
と、きつねがいいました。