TRENDIA CLASSIC

土をまるくもった おはか

グリム兄弟

1 / 7

ある日、お金もちのお百しょうさんが 庭にでて、じぶんの麦ばたけや くだものばたけを、ながめていました。

麦は、すくすく のびています。くだものは、木に すずなりになっています。やねうらのものおきには、きょねん とりいれた麦が、山のようにつまれています。はりが、ささえきれないくらいです。

お百しょうは、こんどは かちく小屋にはいっていきました。なかには、よくふとったお牛もいます。あぶらののっため牛もいます。かがみのように つやつやした馬もいます。

おしまいに、お百しょうは、じぶんのへやにもどってきました。こんどは、そこに、いくつもおいてある 鉄のはこをながめました。そのはこのなかには、お金がはいっているのです。

お百しょうが、こうして そこにたって、じぶんのもっているものを、うれしそうにながめていたときです。きゅうに、とんとんと、はげしく 戸をたたく音がきこえました。

でも、それは、へやの戸を たたく音ではありません。お百しょうの心の戸を、たたく音だったのです。心の戸は、すぐに あきました。

おやっ、だれかが お百しょうによびかける声が、きこえます。

「おまえは、そんなに たくさんのものをもっていながら、それをつかって、うちのものに しんせつにしてやったことがあるかね。

まずしい人たちがこまっているときに、たすけてやったことがあるかね。おなかのへっている人に、じぶんのパンを わけてやったことがあるかね。

おまえは、じぶんのもっているものだけで、まんぞくしていたかね。それとも、もっともっと ほしいと、おもったかね。」

お金もちの心は、たちどころに、こう こたえました。

「わたしは、なさけしらずの ひどい男でした。うちのものにも、いちども よいことをしてやったことは、ありません。まずしい人がくると、そっぽをむいてしまいました。

神さまのことは、かんがえたこともありません。ただ、じぶんのものをふやそうとして、むがむちゅうでした。この世の中のものが、ぜんぶ、わたしのものだったとしても、まだまだ たりないような気もちだったでしょう。」

グリム兄弟の他の作品