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TORENDIA

藪の中

本文約8,400字 ・ 読了時間 約17分

あらすじ(AIが作成しました)

藪の中で見つかった、一人の男の死体。目撃者、当事者たちが語る証言は、すべて食い違っている。真相は、どこにあるのか。人間の心の不確かさを描き、黒澤明の映画『羅生門』の原作にもなった。

芥川龍之介

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🎧 藪の中 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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検非違使に問われたる木樵りの物語

さようでございます。あの死骸を見つけたのは、わたしに違いございません。わたしは今朝いつもの通り、裏山の杉を伐りに参りました。すると山陰の藪の中に、あの死骸があったのでございます。あった処でございますか? それは山科の駅路からは、四五町ほど隔たって居りましょう。竹の中に痩せ杉の交った、人気のない所でございます。

死骸は縹の水干に、都風のさび烏帽子をかぶったまま、仰向けに倒れて居りました。何しろ一刀とは申すものの、胸もとの突き傷でございますから、死骸のまわりの竹の落葉は、蘇芳に滲みたようでございます。いえ、血はもう流れては居りません。傷口も乾いて居ったようでございます。おまけにそこには、馬蠅が一匹、わたしの足音も聞えないように、べったり食いついて居りましたっけ。

太刀か何かは見えなかったか? いえ、何もございません。ただその側の杉の根がたに、縄が一筋落ちて居りました。それから、――そうそう、縄のほかにも櫛が一つございました。死骸のまわりにあったものは、この二つぎりでございます。が、草や竹の落葉は、一面に踏み荒されて居りましたから、きっとあの男は殺される前に、よほど手痛い働きでも致したのに違いございません。何、馬はいなかったか? あそこは一体馬なぞには、はいれない所でございます。何しろ馬の通う路とは、藪一つ隔たって居りますから。

検非違使に問われたる旅法師の物語

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