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TORENDIA

晩餐

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

激しい嵐の夜、若い夫婦と幼い子供は狭い部屋で食事を囲む。子供の無邪気な振る舞いに夫婦は微笑み合うが、ふとした瞬間に母親は日々の生活の苦労や悲しみを思い出し、自身の過去や未来に思いを馳せる。激しい現実に疲れを感じながらも、家族の絆と未来への希望を胸に、夫婦は明日への活力を取り戻そうとする。貧しい暮らしの中にある安らぎと、人生の苦難の先にある救いを見つめるひとときを描く。

素木しづ

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🎧 晩餐 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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いつか暗くなった戸の外に、激しい雨風の音がする、嵐だ。

親子は、狭い部屋の壁際にぶらさがった、暗い電燈の下の卓に集まって、今夜食をしようとしてゐた。まだ本当に父も母も若かった。そして子供は漸く卓につかまって、立ってる事が出来る程の、くり/\と肥ってる女の子だった。

男も女も、その顔にはまだ少しの皺もよってなかった。しかし男の濃い眉毛の陰のくぼんだ優しさうな瞳には、だるさうな疲れの色が見えてゐた。そして女の濃い髪のいろや、細やかな肩のあたりには、なほ打沈んだやうな深い疲れと、まどろむやうな安らかさとが見えてゐた。

一日が終ったのであった。その日の悲しみも苦しみも、夜の安らかさに流れやうとしてゐるのだった。そして、彼等は黙って微笑しながら、その子供のすべてに瞳を注いだ。

子供は、あぶなさうに立ちながら、肥えてまるく鞠のやうに短い両手で、すこしのすきまもなく、そしてあまりに早くテーブルの上のものを掻き廻さうとしてゐた。それで彼等は微笑みみ[#「み」余分か、それとも「見」か?]ながら、すべて茶碗や土瓶、アルミ鍋などを、テーブルの下に置いた。テーブルの上には、わづか子供の持つ小さなスプーンと小皿が一枚残されたばかりであった。

けれども子供は、さわがしい、小さなよろこびに満ちた叫声を上げて、スプーンと皿をテーブルの上にたゝきつけた。

『きかない奴だな。』若い父親は、その小さなまるい腕や、敏捷に怜悧にすきもなく動いてる、黒みがちの睫のながい子供の瞳をぢっと見てゐると、どうしたらいゝだらうといふやうに、やがて顔一ぱいな微笑を持って、子供のまるくつき出た頬を指で一寸つまみながら、大きな茶碗をテーブルの下から探すやうにしてとると、彼女の手に渡した。

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