女百貨店
本文約9,700字 ・ 読了時間 約20分
あらすじ(AIが作成しました)
東京で流行品店を経営する太田ミサコは、冷徹な計算と美貌を武器に、近代的な都会を闊歩する職業婦人である。彼女は夜の社交界で男たちと欲望や取引を交わし、複雑な人間関係を構築していく。妊娠の可能性をほのめかし、仕事と愛撫を天秤にかけながら、独自の道徳観で都市の喧騒を生き抜くミサコ。ある夜、彼女は大阪への旅立ちを決め、見送りの人々を後に列車に乗り込む。待ち受けるのは、計算と欲望が交錯する新たな駆け引きであった。
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「ハロー。」
貨幣の豪奢で化粧されたスカートに廻転窓のある女だ。黄昏色の歩道に靴の市街を構成して意気に気どって歩く女だ。イズモ町を過ぎて商店の飾窓の彩玻璃に衣裳の影をうつしてプロフェショナルな女がかるく通行の男にウィンクした。
空はリキュール酒のようなあまさで、夜の街を覆うと、絢爛な渦巻きがとおく去って、女の靴の踵が男の弛緩した神経をこつこつとたたいた。つぎの瞬間には男女が下落したカワセ関係のようにくっついて、街頭の放射線から人口呼吸の必要なところへ立去って行った。
午後十一時ごろであった。大阪からながれてきたチヨダ・ビルのダンサー達が廃れた皮膚をしてアスハルトの冷たい街路に踊る靴をすべらした。都会の建物の死面に女達は浮気な影をうつして、唇の封臘をとると一人の女が青褪めた朋輩に話しかけた。
「あのなあ、蒙古人がやってきはって、ピダホヤグラガルチュトゴリジアガバラちゅうのや。あははは。」
「けったいやなあ、それなんや。」
「それがなあ。散歩してーえな、ちゅうことなのや。おお寒む。」
酒と歌と踊のなかからでてきた男女が熱い匂のする魅力にひかれて、洪水のようにながれる車体に拾われると、夥しい巡査がいま迄の蛮地のエロチシズムの掃除を始めて、街は伝統とカルチュアが支配する帝王色に塗りかえられた。
同じ時刻。太田ミサコの黒いスカートが冷たい路上で地下の電光に白く煌いた。彼女の横顔が官衙と銀行と、店舗のたちならんだ中央街の支那ホテルのまえまでくると細かく顫えた。形のいい鼻の粗い魅力がうす黒い建物に吸いこまれると灰色のホテルの壁にそって彼女の影がコンクリートの階段を中年女の靴音をのこして一歩、一歩、女の強い忍従が右に折れると、或る部屋の扉を繊奢な澱みもなく暴々しくノックした。
「カム・イン。」
太い男の声が扉のすき間からもれると、太田ミサコは部屋につかつかと這入ると、彼女は盲目のように寝衣の男を見つめた。
「やあ、部屋をまちがえた花嫁のようにてれているじゃないか。」と、巨大な男は彼女に青い尻をむけて云った。
すると太田ミサコは、ソファに片脚あげて、ストッキングを結んだ華美な薔薇の花模様の結び目をゆるめると、