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TORENDIA

恋の一杯売

本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

銀座で生活する主人公は、ロシア人の踊り子アンナ・ニコロや恋人花田君子ら、様々な女性との情愛や交流を通じ、現代社会の不安や歪んだ肉感に触れる。資本主義がもたらす享楽的な都会の喧騒と、未来派的な文明の崩壊を背景に、自身の愛欲と運命を模索する男の姿を描く。やがて主人公は、愛と葛藤を抱えながら、歴史のうねりの中で狂気と官能が交錯する都市の深淵へと身を投じていく物語である。

吉行エイスケ

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アンナ・スラビナ、私が露西亜共和国の踊りの一隅、朱色の靴にふまれて、とある酒台にもたれている。脂ぽい好奇心に犯された赤い衣服、青い化粧した過去の女性の面影が盛り上った曙色の胸に掲げられている。旗亭ダリコントの熱情の女、アンナ・スラビナの周囲、旅装した中年の三人の外国人が取巻いている。

娘のアンナ・ニコロと私、熱烈な接吻、果しがない。一体アンナ・ニコロの愛情に果しがない。さすが、日本を喰いあげた私でさえ、アンナの桃色の乳房、私の身命を賭けて戦う。愛のため、ニコロの愛欲の満腹のためには、私は未来の歓楽もビイクトリア勲章の憧れさえも、放擲する考えだ。私は死すとも恥ない。

まだ私が銀座でシルクハットのうえ、チャルストンを踊っていたころ、友達の横田は亜米利加の流行女達の間に東洋人を情夫に持つことが紐育の社交界に風靡しだすと忽ち渡米してしまった。いまでは横田はヤンキーの女達が過去スペインの愛犬に恋慕したように、無謀な愛情ときわどい婦人社会の教養をうけて裸体で近東風な機械体操や、スパルタ風の腕力を発揮したり、恐らくあの毛むくじゃらの胸を、つき出して、サロンを物好きな流行女の号令によって、自由自在に這い廻っていることだろう。

しかし、私は横田の生活が羨ましくはない。私には、私を愛してくれる数人の女達によって、運命は咲き誇っているのだ。私は哀れな男ではない。私は傲岸[#ルビの「ごうがん」は底本では「ごうかん」]な男だ。私が彼女達を愛するのは女達の男道楽さめやすい色恋をシャム料理法と珈琲色の皮膚に刺繍した。いまでは犬でさえ逃げ出す女達に、私は容易に身を委すことができるようになった。

私がホテルの寝台でしおれかかったビリダリアの夜の花。

必ず、私が眼覚めたとき憂鬱な少女を、その頃、暮れかかった寝室の側に見出した。私が眼覚めたのを彼女が感ずると彼女は、必ず Melins の帯をといて、私の…………………と囁いた。

「妾、朝からまっていたのです」

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