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TORENDIA

東京ロマンティック恋愛記

本文約3,000字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

同棲者である魑魅子との退廃的な生活を送る僕は、ダンスホールで出会った謎めいた女に強く惹かれる。ダンスホールという官能と刺激の迷宮で、僕は言葉巧みにその女を誘い出し、ホテルの一室へ連れ込む。愛の駆け引きや金銭による取引を交錯させながら、都市の喧騒と夜の静寂の中で展開される、刹那的で幻影のような恋の変転を描く。都会の空気に溶け合う男女の情念と、その背後に漂う儚いエモーションを浮き彫りにする物語。

吉行エイスケ

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🎧 東京ロマンティック恋愛記 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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僕の同棲者の魑魅子は寝台に寝ころんで、華やかにひらいた脣から吐き出すレイマンの匂いで部屋中にエロテイィクな緑色の靄をつくりながら、僕のいつもの恋愛のテクニックを眺望しているんだ。

かの女の前身は外人相手の娼婦なので、魑魅子には東洋の古典の絵巻にあるような繊細なこころは、あいにく持っていなかったが、女取引所にあらわれる体温によって花咲いた男性の手管を、侵略に委せて刺青した、肉体的異国的な地図と感情を失ったエモーションの波、そこに愛情の新らしい鋳型を僕は見出すのだ。だから、真紅の波紋絹に、かの女の愛の言葉は乗って、

「――………どうかしよって? うん。」

僕は腕時計に幻れる、午後十時半の指針をみて立上る。

「――………うん。」

「――………浮気しよって?」

すでに、僕のこころの秘密撮影をすまして、魑魅子はラーフェンクラウを小指にはさんで、どうや、と、云うような朗らかな顔をしている。

「――……うん、浮気しよった!」

そこで、かの女は蓮の花がひらくように、僕のこころの迷彩のなかでわらいだす。その、わらい声が妖しくもある蠱惑となって僕に搦みついてくるのだ。

僕は立ちあがると合廊下に出て電話の受話器を外した。都会と郊外の境界線にある中流のホテル、時刻は東京駅を十時五十五分の神戸行急行列車の発車すこしまえの混雑時だった。

★

前夜のこと、………更けるとすこしばかし溝をつたうクレオソートの臭いが鼻に滲みたが、築地河岸附近にあるダンシング・ホールで僕はその夜、踊っていた。

シャンデリヤにネオンサインが螺旋に巻きついた、水灯のような新衣裳のもとで、ロープモンタントをつけた女と華奢な男とが、スポットライトの色彩に、心と心を濡らして跳舞するのだ。そして、ジャズの音が激しく、光芒のなかで、歔欷くように、或は、猥雑な顫律を漾わせて、色欲のテープを、女郎ぐものように吐き出した。

そして、縹緻よしの踊子は、たえまなく富裕な旋律のなかにいた。

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