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TORENDIA

手紙

本文約11,800字 ・ 読了時間 約24分

あらすじ(AIが作成しました)

縁談を託された叔父は、甥の重吉がHへ赴いた先を訪ね、彼が道楽に耽っていることを確信する。叔父は破談を迫るが、条件付きで婚姻を認めることにする。帰路、宿泊先で偶然見つけた手紙を列車が発車する瞬間に重吉へ手渡す。その後、重吉から約束の金が送られてくるが、その額が次第に減っていく様子から、叔父は重吉の誠意や将来の結婚生活に対し、疑念を抱きつつ物語は展開する。

夏目漱石

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一

モーパサンの書いた「二十五日間」と題する小品には、ある温泉場の宿屋へ落ちついて、着物や白シャツを衣装棚へしまおうとする時に、そのひきだしをあけてみたら、中から巻いた紙が出たので、何気なく引き延ばして読むと「私の二十五日」という標題が目に触れたという冒頭が置いてあって、その次にこの無名式のいわゆる二十五日間が一字も変えぬ元の姿で転載された体になっている。

プレヴォーの「不在」という端物の書き出しには、パリーのある雑誌に寄稿の安受け合いをしたため、ドイツのさる避暑地へ下りて、そこの宿屋の机かなにかの上で、しきりに構想に悩みながら、なにか種はないかというふうに、机のひきだしをいちいちあけてみると、最終の底から思いがけなく手紙が出てきたとあって、これにもその手紙がそっくりそのまま出してある。

二つともよく似た趣向なので、あるいは新しいほうが古い人のやったあとを踏襲したのではなかろうかという疑いさえさしはさめるくらいだが、それは自分にはどうでもよろしい。ただ自分もつい近ごろ、これと同様の経験をしたことがある。そのせいか今まではなるほど小説家だけあってうまくこしらえるなとばかり感心していたのが、それ以後実際世の中にはずいぶん似たことがたくさんあるものだという気になって、むしろ偶然の重複に咏嘆するような心持ちがいくぶんかあるので、つい二人の作をここに並べてあげたくなったのである。

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