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TORENDIA

文芸委員は何をするか

本文約5,200字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

政府が新設しようとする官選文芸委員制度に対し、その妥当性と文芸への影響を論じる評論。著者は、政府の権力を背景にした国家的機関が文芸を保護・奨励する手法を、本質を欠いた小刀細工と批判する。特に、文学者の相互評価に政府の権威が加わる弊害や、行政上の都合で作品が圧迫される懸念を指摘。文芸の真の必要は経済的な窮乏の救済にあると述べ、政府の干渉を排し、文芸家が組織化されて自立する重要性を説く。

夏目漱石

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政府が官選文芸委員の名を発表するの日は近きにありと伝えられている。何人が進んでその嘱に応ずるかは余の知る限りでない。余はただ文壇のために一言して諸君子の一考を煩わしたいと思うだけである。

政府はある意味において国家を代表している。少くとも国家を代表するかの如き顔をして万事を振舞うに足る位の権力家である。今政府の新設せんとする文芸院は、この点においてまさしく国家的機関である。従って文芸院の内容を構成する委員らは、普通文士の格を離れて、突然国家を代表すべき文芸家とならなければならない。しかも自家に固有なる作物と評論と見識との齎した価値によって、国家を代表するのではない。実行上の権力において自己より遥に偉大なる政府というものを背景に控えた御蔭で、忽ち魚が竜となるのである。自ら任ずる文芸家及び文学者諸君に取っては、定めて大いなる苦痛であろうと思われる。

諸君がもし、国家のためだから、この苦痛を甘んじても遣るといわれるなら、まことに敬服である。その代り何処が国家のためだか、明かに諸君の立脚地をわれらに誨えられる義務が出て来るだろうと考える。

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