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TORENDIA

鬼仏洞事件

本文約14,300字 ・ 読了時間 約29分

あらすじ(AIが作成しました)

大陸の奇妙な仏像陳列館・鬼仏洞で、不慮の死が相次いでいるという噂が流れる。特務機関の命を受けた女流探偵・風間三千子は、館の秘密を探るために単身潜入する。そこで彼女は、切り離された黄色い手首が番号札を差し出す怪異や、自動で閉まる扉などの謎に直面する。謎の警告を受けて間一髪で脱出した後、彼女の報告を基に新政府は鬼仏洞の閉鎖を要求する。その後、科学探偵・帆村荘六が水銀灯の明滅を利用した巧妙な装置の仕組みを解明し、事件の真相を明らかにする。

海野十三

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見取図

鬼仏洞の秘密を探れ!

特務機関から命ぜられた大陸に於けるこの最後の仕事、一つに女流探偵の風間三千子の名誉がかけられていた。

鬼仏洞は、ここから、揚子江を七十キロほど遡った、江岸の○○にある奇妙な仏像陳列館であった。

これは某国の権益の中に含められているという話だが、今は土地の顔役である陳程という男が管理にあたっているそうだ。

わが特務機関は、未だに公然とこの鬼仏洞の中へ足を踏み入れたことがないのであるが、近頃この鬼仏洞を見物する連中が殖え、評判が高くなってきたのはいいとして、先頃以来この洞内で、不慮の奇怪な人死がちょいちょいあったという妙な噂もあるので、さてこそ女流探偵の風間三千子女史が、鬼仏洞の調査に派遣せられることになったのである。

これが最後の御奉公と思い、彼女は勇躍大胆にも単身○○に乗りこんで、ホテル・ローズの客となった。まず差当りの仕事は、鬼仏洞の見取図を出して秘密の部屋割を暗記することだった。彼女はその見取図を、スカートの裏のポケットに忍ばせていた。

それから三日がかりで、彼女はようやく鬼仏洞の部屋割を、宙で憶えてしまった。これならもう、鬼仏洞を見に入っても、抜かるようなことはあるまいという自信がついた。

無理をしたため、頭がぼんやりしてきたので、彼女は、その日の午後、しばらく睡っていた。が、午後三時ごろになって、気分がよくなったので、起きて、急に街へ出てみる気になった。

その日は、土曜日だったせいで、街は、いつにも増して、人出が多かった。彼女は、いつの間にか、一等賑かな紅玉路に足を踏み入れていた。

鋪道には、露店の喰べ物店が一杯に出て、しきりに奇妙な売声をはりあげて、客を呼んでいた。

三千子は、ふとした気まぐれから、南京豆を売っている露店の前で足を停め、

「あんちゃん。おいしいところを、一袋ちょうだいな」

といって、銀貨を一枚、豆の山の上に、ぽんと放った。

「はい、ありがとう」

店番の少年は、すばやく豆の山の中から、銀貨を摘みあげて、口の中に放りこむと、一袋の南京豆を三千子の手に渡した。

「おいしい?」

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