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TORENDIA

鎖工場

本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

無数の人間が鎖を製造し、自らの体に巻きつける鎖工場。この世界では主人一族が職工の胃の腑の鍵を握り、彼らの行動を支配する。自身の境遇に気づき鎖を解こうと試みる職工は、周囲の者たちの諦めや、組織的な解決を説く他の仲間たちの思考に絶望する。理屈を超えた自我の自覚と不断の戦闘こそが、鎖を解き、新しい社会を創造するための唯一の道であると考え、この工場の現実を打ち破るべく立ち上がる姿を描く。

大杉栄

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🎧 鎖工場 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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夜なかに、ふと目をあけてみると、俺は妙なところにいた。

目のとどく限り、無数の人間がうじゃうじゃいて、みんなてんでに何か仕事をしている。鎖を造っているのだ。

俺のすぐ傍にいる奴が、かなり長く延びた鎖を、自分のからだに一とまき巻きつけて、その端を隣りの奴に渡した。隣りの奴は、またこれを長く延ばして、自分のからだに一とまき巻きつけて、その端をさらに向うの隣りの奴に渡した。その間に初めの奴は横の奴から鎖を受取って、前と同じようにそれを延ばして、自分のからだに巻きつけて、またその反対の横の方の奴にその端を渡している。みんなして、こんなふうに、同じことを繰返し繰返して、しかも、それが目まぐるしいほどの早さで行われている。

もうみんな、十重にも二十重にも、からだ中を鎖に巻きつけていて、はた目からは身動きもできぬように思われるのだが、鎖を造ることとそれをからだに巻きつけることだけには、手足も自由に動くようだ。せっせとやっている。みんなの顔には何の苦もなさそうだ。むしろ喜んでやっているようにも見える。

しかしそうばかりでもないようだ。俺のいるところから十人ばかり向うの奴が、何か大きな声を出して、その鎖の端をほおり投げた。するとその傍に、やっぱりからだ中鎖を巻きつけて立っている奴が、ずかずかとそいつのところへ行って、持っていた太い棍棒で、三つ四つ殴りつけた。近くにいたみんなはときの声をあげて、喜び叫んだ。前の奴は泣きながらまた鎖の端を拾い取って、小さな輪を造っては嵌め、造っては嵌めしている。そしていつの間にか、そいつの涙も乾いてしまった。

またところどころには、やっぱりからだ中鎖を巻きつけた、しかしみんなに較べると多少風采のいい奴が立っていて、何だか蓄音器のような黄色な声を出して、のべつにしゃべり立てている。「鎖はわれわれを保護し、われわれを自由にする神聖なるものである、」というような意味のことを、難しい言葉や難しい理窟をならべて、述べ立てている。みんなは感心したふうで聴いている。

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