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TORENDIA

映画界手近の問題

本文約7,900字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

松竹、日活、新興、大都の四社が結成した協定について論じる。この秘密協約は、監督や俳優を登録名簿に載せることで、会社側の同意なき退職や他社への移籍を事実上不可能にし、従業員から就職の自由を剥奪する。映画産業の健全な発展には自由競争が不可欠と説く著者は、資本家たちが団結して労働者の権利を蹂躙する現状を告発し、この時代錯誤な体制が労働者の生活をおびやかし、奴隷的な境遇に追い込んでいる実態を厳しく批判する。

伊丹万作

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だれかが私に映画界の七不思議を選定してみないかといったら、私は即座に四社連盟をあげる。そしてあとの六つはだれか他の人に考えてもらう。

四社連盟というものの不可思議性については以下私が申し述べるところによっておのずと会得されるだろうと思うが、とりあえず私は自分の知っている範囲で四社連盟とはいかなるものかという具体的な説明から始めようと思う。

四社連盟というのは松竹・日活・新興・大都、以上四社が共同利益を目的とする協約を結んだことによって新たに効力を発生した一つの結社をさすのであって、その協約を四社協定(以前の五社協定)という。

四社協定というのは、四社所属の従業員たちから就職に関する多くの自由を合法的に剥奪することを目的とする一種の秘密協約であって、その内容を正確に知っているのは前記四社の主脳部ばかりである。我々はいつとなく聞き伝えたり、あるいはたまたまその効力の発生した場合の実例を観察することによって、ほぼその内容について知っているが、多くの従業員たちは自己の生存権をおびやかすこの協約に関してほとんど無知であり、なかにはその協約の存在を意識しないものさえある。

さて、四社連盟は一つの登録名簿を備える。登録の範囲は前記四社所属の監督、俳優などの過半数であって、いやしくも一技能ある俳優ならば月収四、五十円程度のものまで登録されているというから意外に広範囲にわたっていることがわかる。

そしてこの登録はあくまでも一方的であって事はまったく被登録者の意志と知識の外において行なわれる。

被登録者の意志と知識の外においてなされた登録が、いったん効力を発生するや突如として被登録者の意志と利益を蹂躙してあますところがない。すなわちこの名簿に登録されたが最後、従業員は会社の同意なくして自由に退社する能力がなくなってしまうのである。

たとえ押し切って退社はしても協定加入の残り三社のいずれに対しても入社の希望を持つことができないのだから遊んで食うだけの資産でもないかぎり結局退社はできないことになる。

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